やまもとしょういち

NO SMOKINGのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

NO SMOKING(2019年製作の映画)
3.4
細野晴臣さんのデビュー50周年を早足で辿るドキュメンタリー。とても楽しいものではあるだけれど…本作はドキュメンタリーとして良質であるとは言い難い仕上がりだった。大半の情報がさまざまな書籍にある細野さんのベーシックな情報や逸話と重複していること自体は一向に構わないのだけれど、この監督の目線を通して新たな細野晴臣像が立ち上がってくることがなかったのがとても残念だった。

80年代後半から90年代におけるアンビエント、ワールドミュージック〜エレクトロニカに関しては、星野源のナレーションによる最低限の言及のみであることも、まあ仕方がないと思う。本作を位置付けるとしたら、これまでに刊行された数々の書籍からダイジェスト的に映像記録した作品といったところだろうか。

それ以上の価値を見出せるとするとしたら、合間に挟まれるライブ映像や舞台裏の映像など言葉で記録できないものくらいだろう。ただそれも、構成があまり練られていないように感じられ、ドキュメンタリーとしてはかなりもったいないように感じた。映像としての取れ高はあるはずだろうし、構成と編集次第でもっとよくなる可能性を自分は感じた。

細野さんのキャリアや音楽そのものは当然素晴らしいものではありますし、書籍などを通じて細野さんの詳細なキャリアに触れたことのない方には最初の入り口としておすすめだと思います。