イスケ

街の上でのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

街の上で(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

自主映画の上映後にイハが古着屋へ行き、
「(青も映画に)出てましたよ」と嘘を伝えるシーンが素晴らしかったなぁ。

監督の町子にとって青のシーンは不要なものだったのに対し、古本屋の田辺さんにとってはそれが何より大切だった。
そして、その現場に居合わせたイハは田辺さんの気持ちを感じて、その想いを伝えに古着屋へ行く。友達として。

仮に田辺さんが監督だったら青は間違いなく出演していたわけです。
イハが伝えた「出てましたよ」は客観的には嘘なんだけど、田辺さんが町子に詰め寄る場面を目撃した人間の主観としては、嘘じゃないとも言えるんですよね。

「街の上」では、それぞれに大切な物語が紡がれている。それは自分の知り得ないところでも無数に。
ちょいちょいすれ違う「古着屋で喧嘩をしていたカップル」には、まさにそのことが投影されていました。個人的に彼らは付き合ったり別れたりを繰り返しながら結婚すると見てますw

話戻りますが、イハが「出てましたよ」と言ったあのシーンには「街の上でのそれぞれの物語」が凝縮されていたように感じました。本当に何度も観たい場面。


青とイハが「ホーム」で恋バナする長回しシーンもとても好きだったなー。とにかく長かったけどずっと聞いていられた。

同じ部屋なのにそこがホームにもアウェイにもなる。役者にとってはただの待機する所でしかなかった場所が、ホームに変わっていく様子が見て、なんだか気持ちがほっこりしていきましたね。(着替えのシーンは笑った)


今泉監督の作品は前置き長めなのでアイドリングの時間こそ必要でしたが、終わった後には温かさの残るとても好きな作品でした。
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