よしまる

リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイスのよしまるのレビュー・感想・評価

4.6
 リンダと言えば「風にさらわれた恋」と「夢はひとつだけ」のレコードジャケットを見てはえもしれぬ気持ちでいた中学生のころを思い出す。何が?って包み隠さずそういう意味です笑
 リアルタイムではなかったのでなおさらドキドキして💓

 大学生になってクルマに乗り出すとカーステにはリンダの「星に願いを」を積んでおく。これ小説のネタにもなってたけど思い出せない。どっちかの村上だったか?まあとにかく助手席で女の子を痺れさせることができるキラーコンテンツだったのだ。
(そう思ってるのは男だけというのはさておきw)

 本作は、いま病のために歌うことができなくなってしまったリンダロンシュタットの伝記映画。めっちゃ楽しみにしていて、期待にそぐわず5月に観た4本の中ではブッチギリで楽しんでこれた。パンフにポスターまで買っちゃった!🤣

 出生からデビューまでも詳細に語られ、このペースで大丈夫なん?93分だよ?と思っていたけれど、曲もたっぷり聴けて特別端折った感じもなく、音楽ドキュメンタリーのお手本のような完成度。彼女を知らない人でも分かりやすく感動できることは間違いない。

 そしてインタビューに応じているアーティストが大御所だらけ。伝記の信憑性とリンダの人徳、双方が高まる最高のソースになっている。

 ドンヘンリーは元々リンダのために呼ばれてバックバンドを編成し、いつしかイーグルスに。リンダが居なかったらホテルカリフォルニアも生まれなかったことがはっきりと判る。

 エミルーハリス、カーラボノフ、ボニーレイット、みんな女性シンガーソングライターの地位がない時から刺激し合い、曲を分かち合い、男性社会と闘ってきた。リンダがいつもその中心にいたのはちょっと意外だった。

 ジャクソンブラウン、ライクーダー、JDサウザーら西海岸勢が揃ってリンダを絶賛していく中、冒頭に書いた大ヒットアルバムを手がけたピーターアッシャーも登場。「ラストナイトインソーホー」のオープニングを飾った、あのピーター&ゴードンの眼鏡のほうで、のちにアップルレコードのA&Rとして活躍。ビートルズ解散後は渡米し、ウエストコーストロックのアーティストを次々と成功に導いた。そんな彼がかなりの尺でリンダとのあれこれを話してくれてるのがとても興味深い。

 ステージの様子も有名曲を中心にたっぷり聴ける。音楽映画の醍醐味は、大画面大音量で観流ことが出来ることにある。そりゃATOMOSやIMAXなら最高なんだろうけど、そんなふうに撮ってる映像じゃないし、ふだんYouTubeで観れるものだとしてもそれがミニシアターの大きさで観れるのは大満足。ストーンズのカバー「ダイスを転がせ」でワディワクテル(のちにキースリチャーズのエクスペンシブワイノスに参加)のボトルネックプレイが大きな画面で観れるなんてそれだけで感涙ものだ〜。

 そう言う意味ではニールヤングなど周辺アーチストの演奏シーンも贅沢に使われていたのも印象的。

 スタンダード曲への挑戦以降、オペラやメキシコ民謡にまで手を出していったいどうしたことだろう?とか思っていたのだけれど、こうして彼女自身の発言を元に歴史として繋げていくと、確実に一本の筋が通っていることがよくわかり、歌うこと、音楽に対するあまりに真摯すぎる姿勢に深い深い感動を覚える。
 実績だけみても70年代では間違いなく世界一の売り上げを誇った女性歌手。もう2度と歌えないとわかっていても、彼女は今もなお、歌うことを諦めていないように見えた。
 伝記映画は亡くなられてから作られた方が普通に感動するよね?と思ってしまうところだけれど、今回ばかりは彼女が存命であることがただ嬉しくて、まだまだ生きていてくれて良かったと、その喜びに満ち溢れるばかりだった。


 誰それ?と言う方のために1曲だけ置いておきます。よろしければどぞ。
https://youtu.be/vDB6qQmDi9Y