未島夏

Our Friend/アワー・フレンドの未島夏のレビュー・感想・評価

4.1
※‪Filmarks‬オンライン試写会にて鑑賞



たった2時間、それも決して多くの人に当てはまる家庭状況ではない中の生活模様を断片的に見ただけなのに、人生はこんなにも上手くいかず、残された幸福はいかに尊ばれるべきなのかを、自分の全然関係ない過去と重ねながら噛み締めていた。

物語で起こる事に近い境遇だから共感するのではなく、人生の苦さそのものに共鳴する様な、きっとそんな感じ。



闘病生活の中で起こる波乱を描く作品は他にも数多く存在するが、ともすれば感動を描くための単なる道具にさえなってしまうこの悲劇的なプロットが、本作では観る人の今までとこれからの経験へと触れる様な芯を持って迫る。

そう出来たのは単に実話を元にしているからではなく、冷淡なまでに事象をフラットに描き、過剰な演出を拒み、ガン告知のタイミングを軸とした回想劇の構成に心血を注いだ技術的な結果だとも言える。

だが加えて、闘病生活とは関係のない部分から綻ぶ各登場人物の葛藤を丁寧に描く、つまり「物語に必要とする」からこそ、劇的に演出するだけの記号的なものではなく、芯から人生の縮図として感じられる作品となったのだろう。
未島夏

未島夏