橘

コリーニ事件の橘のレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.7
難しいかと思って原作を先に読みました。これはお話としては映画の後に原作のほうがパンチあるだろうけど、ドレーアー法とその効力については小説のほうがじっくり描かれていたのでその流れを分かっていられたのは良かったです。
ドイツではこういう事がありましたというのを知るきっかけになりました。

描写や空気が軽くないのが良い。
好みの問題だけれど、もうちょい法廷劇でも良かったです。シュヴァン博士の登場はあんなものではない…ライネン弁護士と淡々とやりとりしてるんだけど法廷がどんどんざわついていくの格好良いのに、何故改変されてしまったのか。。
ヨハナはあんな露悪的じゃないし、マッティンガー教授は老獪なベテラン弁護士なので買収などしない。法を重んじてる。コリーニさんも、動機は言わないけど初めからもうちょい喋ります。
刑事事件として有罪なのは覆らないしコリーニさんもそれを望んでないけど、この正義の問い方は好きです。マッティンガー教授との終盤のやり取りよかった。
事件でのマイヤーおじいちゃんとか、コリーニさんの姉の件は原作よりマイルドになっていてありがたいです。でも「強くなる練習」はうわぁってなりました。コリーニさんのお父さんはキツさが増していました。。
ピザ屋のお姉さんかっこよき。


原作者フェルディナント・フォン・シーラッハは現役の刑事事件弁護士で作家、祖父はナチ党全国青少年最高指導者バルドゥール・フォン・シーラッハ。クラスメイトに、シュタウフェンベルクの孫やリッベントロップの孫、ヴィッツレーベンの孫がいたらしい。
こんなドイツでは歴史修正主義なんてそう簡単に生じないよなぁ、というのが羨ましいです。
あとがきをよく読んだら、原作はフィクションだけれどハンス・マイヤーにはモデルがいました。


原作の小説が出版されたのをきっかけに、「ナチの過去再検討委員会」をドイツ連邦法務省が立ち上げたのはすごい。その後どうなったのかはググってみます(立ち上げは2012年)。
シーラッハ作品他のも読もう。。



追記:ドイツ語はわからないのでグーグル翻訳に頼り切っているけれどドイツ連邦法務省のアカウントは見付けて追ってみました。丁寧丁寧丁寧に進んでいるのかも…内部告発者保護法みたいなのが議論されておりました。
確かこの作品でも問題になってた1946年のニュルンベルク裁判が丁度今頃のようです。偶然の一致。
橘