すずきたけし

仮面病棟のすずきたけしのレビュー・感想・評価

仮面病棟(2020年製作の映画)
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うーむ
つまらなくはないが面白くもない。
面白くはないがつまらなくはない。
感想で一番難儀するパターンきた。

こういった場合「演技がしゅごい!」などと出演者を褒めるパターンか、「美術しゅごい!」といったビジュアルを褒めるか、「ポップコーンおいしい!」といった感動を書いて映画の本筋から感想をボカすのが常套手段でありますが、やはりここは映画的なところを突っ込まなければなりますまい。

致命的その1。
サスペンス要素がひとつもないんですよねぇ。これ致命的。
突然現れたコンビニ強盗によって病院内に閉じ込められたというソリッドシチュエーションものと言ってもいい設定ながら、そこから脱出しなければならない緊迫感がない。
誰かが怪我して死のカウントダウンといったお約束なサスペンスは舞台が病院なので治療のための助けを呼ばなければいけない理由が生まれにくい。
また警察への通報が出来ないのでその方法を探さねばならぬ。というのも、早々にある人が諦めてちゃってね。
ということでピエロのマスク(またピエロか)を被った犯人が拳銃もって病院を制圧するのだけれど、立て篭りの際には人質はなるべく少なく、そして一箇所にまとめて目の届くところに置いておかないといけないという籠城セオリーを完全に逸脱。ピエロの犯人一人と人質となる主人公と看護師たち五人は別行動。しかも犯人に監視されるでもなく自由行動。たまに現れたピエロ犯人に「ひゃっ」と怯えちゃったりして結構ユルユルな監禁なんですよね。
映画的に絵が持たないというか、間が抜けているというか、まあ緩い。
後半からこの事件の真相が明るくなってきたとしても、その緩さの理由にしては締まりが悪い。
そして致命的その2。
開始30分くらいで真犯人がわかってしまう。
人物の行動を見ていればふと違和感ある行動が目についてしまうのです。
そして主人公から一番遠い関係の人間を疑えば、自ずと見えて来るものですな(なあワトソンくん)。不自然なほど某人物をカメラで押さえていればそれに意味がある事を嫌でも察してしまいますよね。ミスリードがあまりうまく機能していなかったという感じです。

まあしかしです、坂口健太郎の傷心した演技の安定感、日本のチャーリー・シーンと僕が勝手に呼んでいる(もちろん政宏はエミリオ・エステベス)高嶋政伸の演技は『犬鳴村』に続き権力者の嫌な感じが素晴らしいですよ。
そして舞台である病院のディテールは細やかでいて大胆、説得力あるビジュアルです。木村ひさし監督の前作『屍人荘の殺人』の美術とは雲泥の差です。

そしてTOHOシネマズのポップコーンはおいしい!
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