すずきたけし

スケアリーストーリーズ 怖い本のすずきたけしのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

僕のオールタイムベスト級(ベストとは言ってない)映画として『トロールハンター』(2010)という映画があります。
 これはノルウェーで学生がドキュメンタリーを撮影中にトロールハンターのおっさんに出会うという話(雑)でケレン味溢れるビジュアル、突き抜けた脚本と「見たいものを惜しげもなく見せる」開き直りっぷりで「ノルウェーといえばトロール」と僕の心に刻み込んだ傑作です。

その監督であるアンドレ・ウーブレダル監督がメガホンを取ったということで、これは見ないといけないと劇場へダッシュしました。

映画はこうです。
仲良し三人組が曰く付きの古い家で肝試しをして大変な目にあうという話(本当にそれだけ)。
怖すぎな挿絵で学校図書館で置く置かないの騒ぎになった児童書シリーズが原作です。

 映画の舞台のペンシルべニアはアメリカの北東部に位置していて、ヨーロッパからの入植初期の地域だけにいわく付きの話が生じやすくゴシックホラーには適した土地柄ですね。
 
 学校のジョックス(スクールカーストでの上位)であるトミーはスタジャン着て(レタードジャケットともいう)仲間とつるみノリでベトナム戦争へ志願登録。主人公は作家志望で内気な女子ステラとナードらしいオギーとチャックの主人公三人組で(トランシーバーで連絡を取り合うこの手の映画のお約束も)、そしてストレンジャーな謎の少年ラモンも途中から加わります。
 この映画で新しいのは、ジョックスに対して主人公たちがいきなり攻撃を仕掛けるところです。これまではまずジョックスのイジメや嫌がらせから始まるのが常だったのですが、今回はいきなりの先制攻撃。これは新しい。
 ちなみにアメリカの学園もののスクールカーストでは、上から体育会系ジョック(映画ではトニー)、チアリーダーなど美人組のクイーンビー(映画ではチャックのお姉さん)、主人公たちは文化系(ナードとか)で最下層に位置します。

 そしてやはり映画で気になるのが1968年という映画の時代背景です。ベトナム戦争や大統領候補のニクソンが頻繁に登場したりとこれからの不穏なアメリカをイメージさせているものの、それらが物語に直結しているわけではありませんでした。またティーンエイジャーが肝試し(度胸試し)からイノセンスを失い大人になるという通過儀礼的なお約束が、ベトナム戦争とニクソン就任によりアメリカがイノセンスを失って大人になったことへと重ねるという見方もできます。が、この見立ては少々こじつけかもしれませんね。仮にそうだとしても映画としての効果が見られませんし、結局のところ1968年を舞台にする必然性はあまり感じられなかったです。もったいない!
 
  この映画の見所は個性的なクリーチャーです。
「案山子のハロルド」が案山子にしては顔がリアルすぎてそれだけでめちゃくちゃ怖いんですが、いまにも動き出しそうな感じがジワジワきます。 そもそも案山子も子供の恐怖の対象として昔から存在していたのでしょうな(偉そうに)。
 しかしそんな出来の良いクリーチャーからの襲われ方がなっちゃいない。危機が迫っている人に「ニゲテー!」「キヲツケテー!」と警告しているのにぼぉ〜っとしやがって!
これじゃ「しむらー後ろー!しむらー後ろー!」と同じじゃないか!「ドリフかよ」と突っ込むこと2回。徐々に恐怖に囲まれていき主人公たちが真綿で締められるように恐怖が迫ってくる感じはなかったですね。そういう感じにしたいのは伝わってきましたが。
 
やっぱりウーブレダル監督にはチマチマと隠れて人を殺めていくシミッたれたホラーより、どデカいトロール出して潔くペンシルベニアの街を破壊するくらいの映画を撮って欲しかったですな(偉そうに)
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