すずきたけし

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREYのすずきたけしのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

実はあまり期待していなかったんですよね。前作の『スーサイド・スクワッド』が思っていたよりも自分に合わないというのもありまして。
という感じで期待のハードルを下げてみたらなにこれ面白かった!!!

アメコミ映画というか、DCコミック映画に欠けているのはケレン味であると常々思っていたのですが、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』はケレン味が気持ちが良いほど溢れ出ちゃって最高でした。ケレン味ある映画ってどのようなものがあるのかといえば『キックアス』『キングスマン』のマシュー・ボーン監督作が面白くてわかりやすいと思います。映画の中でユーモアと下品と荒唐無稽が絶妙なバランスで華麗にダンスしている作品は見ていて体を動かしたくなるような高揚感があるのですが、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』はまさしくそんな映画です。

 ジョーカーと一緒に悪事を働いてきたハーレイ(マーゴット・ロビー)ですが、ジョーカーにフラれたことから「ジョーカーと別れたならいままでの借りを返してやる!」と“ジョーカーに恨みがある”人間たちから狙われてしまいます。
 ジョーカー本人には復讐せず、その元カノのハーレイ・クインに復讐するというなんというクズっぷり。またハーレイもジョーカーが彼氏だったからやりたい放題できていたのも自覚はしていて別れたことを隠していました。こういったところはリアルでも似たようなケースがありそうで上手い。
 そしてハーレイはジョーカーとの馴れ初めであった思い出の化学工場を爆破して過去と決別し(このシーンは『ダークナイト』へのオマージュですねぇシミジミ)、彼女は“ジョーカーの女”ではなく、ハーレイ・クインとして自立して華麗に覚醒していくというのが本作の物語です。
とてもわかりやすい!

 対する敵役のユアン・マクレガー扮するブラックマスク代表とするクズの男性陣ですがラストで多勢に無勢のハーレイたち女性を襲う男たちは皆マスクで顔を隠すという、女性に対しての男社会とそのマジョリティーの圧力を象徴するようなところがわかりやすく、女性を見下したクズな男を女性がブチのめすという単純明快なことをやってのけています。アメコミ映画ならでは自由なストーリーテリングとド直球のテーマが正義になりうる思い切りの良さが素晴らしい。

  またアクションの切り取りかたやテンポ、そして賑やかさがまた素晴らしく(結構グロい)「良いもの見せていただきました眼福眼福」と拝みたくなるほど。ブラックキャナリー(ジャーニー・スモレット=ベル)の格闘シーンの切れ味、ハーレイが警察署にカチコミに行く高揚感(音楽が最高)、同じくハーレイがバットを手にした時のレベルアップ感。本当に最高。
 また男性上司に手柄を横取りされている刑事モントーヤにはロージー・ロペス。『ナイト・オン・ザ・プラネット』の第1話NY編でエキセントリックな話し方で抜群の存在感を示していた妹役の人ですよ。しゃべり方でわかりました。劇中でも「口が悪い」と言われてましたけど、『ナイト〜』では本当にすごいので一見の価値ありです。
 事の発端となるアジア系のカサンドラは前半の仏頂面から後半に欠けてぐっとキュートになっていくのも面白い。
 そしてメアリー・エリザベス・ウィンステッド(MEW)。
人呼んで・・・クロスボウ・キラーの異物感。
(僕はMEWが出ていればどんな映画でも星2個は無条件でつけてしまうので『ジェミニマン』は星2個です)
そんな彼女らとハーレイが共闘するのは義理や友情や恋愛、利害の一致ではなく“連帯”というのがとっても現代的。
 対してブラック・マスクのユアン・マクレガーと右腕のビクター・ザーズは確実に恋人。こちらもまた現代的なんですが、日本映画『GONIN』のビートたけしと木村一八の殺し屋カップルみたいな関係ですよ。

 アメコミ映画ではあるのでそのノリについていけるかどうかで人を選ぶ映画ではありますが、今後ともDCコミック系としては無理してユニバースにこだわらず単体映画でこういった良作を続けていって欲しいなと思いますよね。今年は『ワンダーウーマン1984』も控えていますので楽しみですね。
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