未島夏

タイトル、拒絶の未島夏のレビュー・感想・評価

タイトル、拒絶(2019年製作の映画)
3.9
高校生までにセックスを経験できた人間が『人生クソだわ』みたいなこと言ってんの見ると虫唾が走るんですよね。舐めてんのかコイツって。

こちら側から言わせてもらえばお前どんだけ恵まれてんだよって話で。

要はそんな、「ないものねだり」から始まるのがこの映画。



ちやほやされる様な主役になれない主人公が、デリヘルの体験入店で相手を拒否ってしまい、その後デリヘルのスタッフとして働く事を「タヌキ(脇役)を演じる」と喩えることから物語が始まる。

そこからウサギ(主役、デリヘル嬢)側の「ないものねだり」を垣間見ることによって、ウサギは本当にウサギなのか、そもそも誰もが羨むようなウサギなんて存在するのかを見つめる。



自分って自分にとって常に身近じゃないですか。
自分の価値なんて世の中で一番見えにくいところにあるんだろうなと思うんですよ。
だからみんな気づけなくて。

ウサギも、タヌキも、みんなそれぞれに、それなりに、クソなんすよね。

でもだからこそ、自分にあるものとか、他人にないものをせめて見ようとすることで、自分を卑下したり、誰かを必要以上に羨んだりする事がないように、生きていくしかないんですよ。



別に高校生までにセックスなんて出来なくても、それをコンプレックスにして呑まれてしまうような事さえなければ、その先に割とチャンス転がってるんですよね(お店以外のです)。
自分もそうだったし、ちゃんと拾えたし。
まあ、拾えなかったものも大量にあるけど。

今満たされない部分も、欲しがり続ければいつかチャンスくらいはあるはずで。

チャンスは人によって数が違うだけで、境遇に関わらず存在はしてて。

そこでチャンス数の多い人をウサギに仕立て上げて嫉妬したり、コンプレックスを作り上げる自分に、死ぬ気で抗えるかどうか。

頭で分かってる事に心はなかなかついて来ようとしないけど、それをやるしか抜け道はない。

どうしようもなく辛いけど、この映画のラストを迎えた後の登場人物たちも、そうであってほしい。
上手くいかなくてもいいし、クソでもいいから。
未島夏

未島夏