監督の思いがほとばしる。それを代弁するのが主演の伊藤沙莉。このキャスティングがいい。
デリヘル嬢として働こうとしたが働けず、裏方をつとめることになったカノウ。デリヘルには個性的な女たち、そして男たちが集い、些細なことでいがみ合う。でも、それぞれに複雑な思いを抱えていて、それがだんだんとあらわれていく…
カノウはみずからをタヌキだと、そしてみんなはタヌキではなくウサギが好きなんだという。まさにそのウサギが人気デリヘル嬢のマヒル。でもマヒルは、みずからをゴミ箱なんだと、そしてゴミとクズの男たちを受け入れているんだという。
「くっだらない」「あほかぁ」と思わざるを得ないような世の中を、自分の気持ちを誤魔化しながら、また微妙にバランスをとりながら生きている女がいるんだと、そういうことか。
とりわけ男たちへの反発がみえる。制服を着て踊るアイドルを「喜び組」のようだと、そしてそれを見て喜ぶ男は幼児性が高いんだとカノウが毒づくシーンがある。こういったところなんかとくに。
佐津川愛美といい、片岡礼子といい、なかなか味のあるデリヘル嬢をそろえたなと。でもその中でも、マヒルを演じた恒松裕里がよかった。ずっと浮かべている薄ら笑いが哀しげで。
で、恒松祐里って何に出ていたかなと思ったら、『くちびるに歌を』のあの子だった…