マヒロ

ラ・ジュテのマヒロのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
3.0
第三次世界大戦が発生し荒廃しきった近未来のパリで、支配者層は奴隷の身分である人々に時間旅行実験を施すことで現代の状況を改善する方法を見つけるよう試みるが、上手くいかずに被験者は廃人になるか命を落とすかの二択でしかなかった。そんな中新たな被験者に選ばれた主人公は過去にとらわれ固執している男で、それが原因なのか唯一時間旅行に成功する……というお話。

モノクロの写真(静止画)にナレーションのみで物語が進行する、究極のミニマリズム映画。
コマとコマの間が極端に空いた作りはこちらに想像の余地をたっぷりと残してくれるし、断片的な記憶の羅列を主人公と共有しているような不思議な感覚に陥ってくる。この映像の説得力から、奇をてらっているとか誤魔化しのためとかではない、確固たる理由があってこの静止画という手法を用いたんだなということがよく分かる。

ギリアムの『12モンキーズ』が今作を参考にしたという話は聞いたことあったけど、いざ観てみたら参考どころか殆ど同じでビックリした。もちろん『12〜』はギリアム流の味付けがこれでもかとされていてこちらとはまた違う印象があるが、何となく何が起こるのか読めてしまったのがちょっと勿体無かったかも。

途中一場面だけ静止画ではない動きを見せるシーンがあるんだけど、そこは美しいもののようにも見えるし、なんだかよく分からないが見てはいけないものを見たような異物感を覚える恐ろしげな場面にも思えた。主人公もナレーションも特にそこに触れないので真意は謎のままだが、ただ動いただけのシーンがいかようにも解釈できるものになるっていうのがこの映画ならではな感じで面白かった。

(2019.138)
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