zhenli13

ファースト・カウのzhenli13のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
不思議な寓話のような物語で『オールド・ジョイ』も彷彿とさせるけど、あの作品のような不穏さが無い。寧ろ『オールド・ジョイ』で表すことを許されなかった深い森と男性二人の友情を理想として描き得たのかもしれない。

オープニングで白骨を二体掘り出すシーンからシームレスでぼろぼろの手甲をつけたジョン・マガロの手がキノコ採ってるアップに移り、焚火をしている山賊みたいな男たちが出てきて、あ、これ時代が遡ってるのかと気づいたところから何となく安心して観ていられた。スタンダードサイズも安心するし、森の中を歩き回るシーンも無条件で安心感がある。

ハリウッドの多様性コードを違和感なく達成できる開拓時代は人種の坩堝で、ネイティブ・アメリカンや白人黒人のほか、中国人、ラテンアメリカ系先住民族と思しき人など混在している様子が描かれていて興味深い。一攫千金を狙ってやってきた白人の男たちは見事に汚らしくて、人々が商売をする広場はいつも水たまりで泥濘んでる。『キラーズ・オブ・フラワームーン』も記憶に新しいリリー・グラッドストーンがここでも白人仲買商の妻役で、すでに西欧式の生活をしている。仲買商の家に仕えるネイティブ・アメリカンの召使が個室ベッドで、下働きの白人が納屋の二段ベッドという白人/非白人の逆転した上下関係がここでもみられる。

オレゴンに初めて連れて来られた牛の乳を盗んで作られるドーナツはサーターアンダギーの形で、観終わって食べたくなった。
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