パケ猫パケたん

返校 言葉が消えた日のパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
3.5
台湾映画

ジョン・スー監督作品。長編映画処女作。ホラー映画であり、ミステリー映画であり、恋愛映画でもあり、それぞれが確固たる質感を持っている、独創的な力作だと思う。

台湾に於いて、1947年から続いた「白色テロ時代」を背景として描いている。

「白色テロ時代」とは、蒋介石率いる国民党が、反体制的(共産主義的)な人々を弾圧するために、密告と監視の社会を作り、投獄と処刑を繰り返した時代をさすらしい。40年間も続いたことが、より恐ろしい。

閉鎖空間な高校の夜が、主な舞台となっている。無限牢獄の様な美術装置と、赤い蝋燭の光の対比が美しい。

ホラー映画としては、黒沢清監督のそれを想起させる。終始暗い画調、現実と異界との境界線が定かでは無い空間、幽霊の迫真性などなど。

また、黒沢清的なものを極めていくかの趣向なので、自ずと、ベルトルッチ的にもなる。徹底した映像主義、人間の持つ根元的な孤独など。『シェルタリング・スカイ』(1990)の音楽に似たパーツもあって、監督のファンとしては、嫌いではない。

昼間の恋愛映画的な部分も、いかにもアジア的な哀愁があった。

主人公の女子高校生をファン・レイが演じている。松岡きっこと仲間由紀恵を合わせた様な美少女。また、女教師をチェ・シーワンが担当しており、彼女は永野芽郁そっくり。日本の新旧美人女優の共演を夢想するのが、東アジア映画の醍醐味のひとつなのか、楽しかった。

不満な点は、警官の化け物の造形が、『A.I.』(2001)と『樹海村』(2021)の合体した奴みたいでけったい(←言葉遊び)であり、怖くはなかった。

実際の事件を題材にして、高校の中でこんな裏切りと殺戮が行われたのか、と暗くなってしまった。
検索してみると、台湾のホラーゲームが原作だそうで、ほっと胸を撫で下ろした。

これは、映画の採点を4.0から3.5に下げてしまったが、明るい気持ちになるという、初めてみたいな経験をしたo(^o^)o

誠実に作られた映画であり、ジャパニーズ・ホラーの系譜にあるかの様な秀作。