群青

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の群青のレビュー・感想・評価

3.8
2020年劇場観賞9作目。


社会現象にまで上りつめた鬼滅の刃。その影響は凄まじく、2019年の漫画単行本売り上げがワンピースを上回ったほど。

メディアも人気を取り上げ、子どもたちも熱心に楽しんでいるという。

まずこの作品の自分のスタンスや作品自体の考えを書く。

私は第一話からの本誌で読んできた所謂古参にあたる。
今でこそ鬼滅が好きというと人によってはあぁアレね、と冷笑される対象(人気作の宿命)になってしまった作品だが、第一話は決してそんな印象ではなかった。

まず絵柄がジャンプっぽくなく決して上手とは言えない。
そして鬼やその鬼の能力、鬼を狩る部隊、その幹部たちなど、設定的には特に真新しく斬新なものでもない。
ストーリーもよくある復讐劇で初っ端から修行パートに入り、大丈夫なのか?とも思った。

ただし、明らかに他と違ったのはまずキャラクターの強烈な個性だ。
顕著にわかるのがキャラクターたちの言い回し。それは第一話から既に出ている。

鬼化した禰豆子が暴れたせいで足を滑らせ崖から落ちた炭治郎だったが、降り積もる雪のおかげで怪我を追わずに済んだ。
その時、雪のせいで助かった、落ちたのも雪のせいだけど、、
こんなセリフはまず思いつかない。
炭治郎が炭治郎だからこそつぶやく印象的なシーンだった。

その他にも、傷を負っていても自分は長男だから我慢できる、次男なら我慢できない、とか禰豆子が不細工と言われてページを跨ぐ勢いで訂正を希望する、とか鬼と対面して申し訳ないけど気持ち悪い!申し訳ないけど!とわざわざ繰り返したりとか。

上記は全て炭治郎のセリフだが、その他のキャラもそのキャラしか言わないであろう思考・行動・セリフなのだ。

こんなにキャラ一人一人がたっているものは少ない。
また、キャラは登場時、バックボーンが描かれていない。しかし皆それぞれの人生があることが想像できるような余地が残してある。
そして後の回想でバックボーンを知れた時、その余地がかっちりハマるだけでなく、回想後のキャラの行動でその余地がさらに広がるのだ。
これはまさにリアルでの友人やその他親しい人と一緒だ。つまり、キャラクターが生き生きとしているからだと思う。
これだけ魅力的にキャラクターが描かれるとそりゃ凝ったファンによる推しメンも非常に作りやすい。
炭治郎や禰豆子などの主要キャラクターもそうだが、特に柱と呼ばれる鬼狩りの幹部。

彼らもまだアニメ化されてないため詳細は書けないが、彼らもまだ奥深いバックボーンを背負った魅力的なキャラクターだった。


次になぜここまでの現象になったかを書く。

それはひとえにアニメ化による幅広い視聴者の増加だと思う。
一応アニメ化前から注目の漫画としてそれなりの人気は誇っていた。しかし、それは王道のそれではなく、ワンピースやヒロアカの隣、いや遠く離れたところで好きな人は好き!というのが他より若干多いくらい、という位置付けだった。

それがアニメ化によって爆発的に人気が出たと思う。
じゃあそのアニメ化の人気の理由は何か?と問われたら、アニメ制作会社の美麗な画面作りもそうだが個人的には声優の力が多分にあると思う。

当方はアニメから離れて久しく、現在人気声優と呼ばれる人をあまり知らない。
それでも炭治郎を演じる花江夏樹はおはスタの司会も務めていた若手人気声優ということを知ってたし、脇を固める下野紘や松岡禎丞は0年台と10年台のアニメを支えてきた中堅の人気声優だった。

メインを若手から中堅の人気に据え、まず若い声優好きを集めるのはまあよくある今頃のアニメだが、鬼滅が一味違うのは、敵陣と味方幹部である。

敵の鬼の総大将、鬼舞辻無惨を演じるのは忍たま乱太郎で昔から先生役を務めていた関俊彦というベテラン。
彼を筆頭に1話限りの鬼ですら緑川光や子安武人、諏訪部順一などなどのベテラン。
その他も福山潤や小松未可子、下弦の可哀想なリストラ勢でさえも保志総一朗などなど、幅広い人選。

声優は基本的にベテランでさえもオーディションで選ばれるため、これもそうなんじゃないんか?と疑問が湧くが鬼側に関してはスタッフの指名だという。
これは鬼という存在がたとえ1話限りでも一般人からは脅威な存在であり強さを感じなければならないためだという。なんという力の入れ込みようだろう。

しかもアニメはまだまだ序盤。
後述するが恐らく、鬼たちの中でもトップの強さを誇る上弦の鬼は大ベテランや超人気を据えるに違いないため、個人的にかなり期待を持っている笑
(コメントにてネタバレ非表示ではありますが当方の勝手な上弦の鬼 声優予想をしております笑)

こうした人選によりキャラクター一人一人に声優たちの熱演が込められ魅力がかなり増したため、アニメ人気が上昇、一般人の目にまで入るようになったのだと思う。

ただの人気アニメならアニメ好きが網羅して終わりだが、鬼滅はそれで終わらず社会現象にまでなった。
そこまでの要因は正直わからない。
第一話からファンだった当方すら、脇にひっそりとではないが存在感があるが王道ではない、という認識が今でも拭えない。
それが僅か公開から1ヶ月弱で日本の興行収入の歴代2位まで上り詰め、次を控えるのはあの宮崎駿の千と千尋しかいない、なんて誰にも予想できなかっただろう。


ということで、ようやく本題の映画のレビューに入る。長い笑 長かった。どんだけ熱があるんだと突っ込まれたら、それだけ好きな漫画なんですよ、心を燃やしたんですよ、と言いたい笑


と言いながら評価が3.8なんですけどね笑
なんでや!笑


いやまあ原作を読んでたからというのもあって、当然と言えば当然だが原作の話から逸れない。
最初から最後まで知ってる絵だけだったので、予想以上にすげえ!がなかったといえばなかったからかもしれない。
本当に忠実に漫画をアニメにしている。
というかそれ以上だった。

やっぱり映画を見て好きと公言しているからか、漫画では許せた部分が気になって仕方がなかった。
結構な人が言ってるのと一緒なんだが、みんながみんな、よく喋る。
本当に1から100まで説明してくれる。

これはまあ原作がそうだし何より炭治郎がよく独白するキャラなのもそうだが、原作はこの無限列車編からはナレーションが増えた気がした。

キャラクターたちの深層心理の説明や、今回の敵である魘夢の術のからくりなどはほとんどこのナレーションでの説明だった。
これをじゃあどうやってアニメでやるのかと思っていたら、TVアニメシリーズでは誰かを起用するのではなくキャラに話させるか絵で説明するかスルーするかだった。この選択肢の中で圧倒的にキャラに説明させるのが多かったが、今作は特にそれが顕著。
特に敵の魘夢の喋りっぷりはすごい。
配下の一般人にかなり具体的に術の掛け方を説明、相手である炭治郎たちにも敵なのにどうやって自分を邪魔してきたか一人一人説明する始末。
もう少し、演出でどうにかならんかったかと思わざるを得なかった。

これに目を瞑ればあとはアクションとドラマの連べ打ち。
楽しめなかったといえば嘘だ笑
完全に楽しんだ方である笑
というかハンカチ案件でした笑

今作のメインである炎柱、煉獄さんの魅力を余すことなく伝えるため、序盤から映画オリジナルの鬼を増やすことによって出番を増やしたり、ここぞというところでTVアニメシリーズの白眉だった19話で使われた竈門炭治郎の歌をリフレイン的に使用し涙を誘い、そしてそして解禁となった上弦の参 猗窩座を『超』人気声優である石田彰を起用させとどめの一撃、いや破壊殺 滅式でした笑


煉獄さんのくだりも泣けるが、個人的には炭治郎がどうやって敵の術から逃れられるかのシーンがかなり泣けた。

敵は夢で攻めてくる。
炭治郎は夢で鬼に殺されたはずの家族に再会する。しかし敵と戦うためには夢から醒めなければならない。
夢なら家族と幸せな生活をもう一度できる。それを捨てなければ敵と戦えない。
甘い夢より、仲間のため、みんなのために厳しくて痛い現実を選ぶ。

それが泣けるし、敵へのヘイトもたまる。こんな夢を見させるなんて酷いやつ!となる。極め付けは、優しい夢でだめなら、と敵がはめる次の夢。
それを見て炭治郎が激昂する。俺も激昂する。ふざけんじゃねえ!と笑

原作で何回も読んだのにね笑
完全に泣かされました笑

ということで、ここまで書かなくてもみなさん既に観て楽しんでしっかりと魅力をつかんでると思いますが笑
いつも書いてますが自己満です笑

それにしても、259億(12月1日現在)。
とてつもない額である。
もう日本興行収入1位は目前。
心を燃やせ。


追伸
EDのLiSAの炎は良いとして、2回も煉獄の絵を写すのはやり過ぎかと思いました笑
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