rayconte

心霊×カルト×アウトローのrayconteのレビュー・感想・評価

心霊×カルト×アウトロー(2018年製作の映画)
5.0
最近軽く話題になっていたので観たが、これは傑作!

ホラー作品を手がける監督のもとに、心霊現象らしきものを収めた映像に映る行方不明者の捜索依頼が舞い込む。
ところが捜索は二転三転し、半グレ集団や彼らのビジネスとされるカルト宗教などに話が及んでゆき、混迷を極めていく。

この映画は、全編通して薄い膜のように怖ろしい空気が張り付いている。
考えてみると、心霊とカルトとアウトローに抱く恐怖はよく似ている。
実体が見えず、底が知れなくて、ただ漠然と関わるとよくない事が起きそうな予感だけがある気持ち悪さ。要するに「何が怖いのか」わからないから怖いということ。
その観点からいけば、一見突飛な展開に思えるこの映画は本質的には同義のテーマを扱った一貫性のある作品なのだ。

視聴者が真偽に混乱する作りである一方、「ドキュメンタリーであってもフィクションの部分はある」というセリフを使ったり、原一男「ゆきゆきて神軍」を画面に登場させたり、端々で親切なガイドを散りばめてくれている。
原一男は、カメラが存在している以上被写体が自らを演出してしまったり、事実が断片的に切り取られたりするものだが、それを「事実」として構成するドキュメンタリーの胡散臭さそのものを作品にしていた人物だ。
この映画の画面に彼の作品が映るということは、要するに本作が虚実ない交ぜで作られていると説明してくれているわけだ。

ではどこまでが真実なのか。
これは私見だが、筋書きそのものはフィクションだろう。
北九州の半グレ集団やサイバーカルト宗教が実在する点や、件の行方不明者の存在も事実かもしれないが、それらが綺麗な線で繋がっている点は監督の演出に思える。蓋然性の観点から観るとそう見るのが妥当じゃないだろうか。
恐らく、劇中に出ていたライターあたりが半グレやカルトの情報ソースで、その面白い話を聞いた監督が本作の着想に至ったといった所ではないだろうか。
「コリアンタウン殺人事件」よろしく、POVホラーはインディーズのトレンドでもあるし。
まあこんな憶測が全部間違っていて、本当に嘘偽りなしかもしれない。
マジでそれなら背筋がひどくゾッとするが、様々な見方が出来る映画だからこそ傑作といえるだろう。
rayconte

rayconte