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ジャングルランドのrayconteのレビュー・感想・評価

ジャングルランド(2019年製作の映画)
5.0
ベアナックルボクシングが決して陽の目を見ることがないように、この映画も誰しもに共感を与えるものではないだろう。
だが、僕の心は震えた。
少なくとも、それを感じ取れる人にとっては最高の作品だ。

一歩進むごとに軋む吊り橋の上を、最後には必ず落ちると知りながらも渡るしかない兄弟と、運命に足元をすくわれてもそこから抜け出そうと足掻く女。
出口のないトンネルにも運命の歯車はあり、その奇妙な巡り合わせが三人を最初で最後の旅へと運ぶ。
「ピーナッツバターファルコン」のような切り口でありながら、それとは全く違う希望のない旅だ。

愛と束縛はいつも紙一重で、愛ゆえの行為がいつの間にか取り返しのつかない泥沼を作り出していることもある。
もがくたびに憎み、息が切れるたびにひとつずつ何かを諦め、愛しているのに相手を苦しめていく。
依存から離れなければ、いずれはお互いに窒息するだけだ。
スタンとライオンがそのことに気づいたのはあまりに遅く、現実を変えられないほどすべてを失っていた。
だがそれでも、最後に大事なものを手にした瞬間は二人の人生にとって何よりきらめく物になるだろう。

家があっても、愛する人がいなければそこは家にならない。
たが愛した記憶さえあれば、それこそが家になるのだ。
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