ずいぶん前にCSで録っていた町山UFOでの本邦初公開、フィル友のHKさんがレビューされて気になっていたものをようやく鑑賞できた❗️
日本では長らく未公開&未ソフト化だったブライアンデパルマ幻の監督デビュー作。
主演のトムスマザーズは当時のアメリカでは人気のコメディアンだそうで、演技がうまいかと言われると微妙なれど、どんなシチュエーションにもニコニコ笑顔で飄々と対応していくのが面白い。
トムが演じるドナルドは大企業の敏腕幹部。しかし突然思い立って会社を辞め、タップダンスのマジシャンの道へ進むことを決める。え、何それ?笑
ま、内容はともかく。冒頭から同僚と別れて会社を後にするまでの道のりが得意のスプリットスクリーンで表現されて驚かされる。
さらには自室のアパートを俯瞰で捉えまるでミニチュアハウスのように真上から映し人物を追いかける。
町山氏も解説していたように、こうしたデパルマカットがごく初期から爆発しているのを観るだけでも大満足。
マジシャンのお師匠さんはオーソンウェルズ。技巧にこだわるデパルマにとって神様みたいな先輩に、こんなおとぼけな役をやらせているのがすごい。トムと二人で脱出マジックをやってるところなんて、何事か?と思うほどに可笑しい。
もひとつすごいのはヒロインとして登場するのがキャサリンロス!これが本作をとても華やかで魅力的なものにしている。やっぱり女優さんの力ってすごい。
町山氏は映画「卒業」のオマージュと力説されていて、なるほど!と思ったけれど、このラストシーンがデパルマが解雇されたのち、ほかの編集者の手によって完成されたとは思えないほどの出来。
途中冗長になる場面は多々あり、それはトムスマザーズとの関係がうまくいかなかったこととも無関係ではないのだろう。
エンディングも本来はそうしたシーンは無くて、トムが自殺して終わるバッドエンドとしていたという話もある。(いったいどうやって編集したのだろう??)
どこまでがデパルマの作品と言えるのか、彼の意図がどれだけ反映され残されているのか、結局ボクにはわからない。
それでも本作がデパルマの処女作であることには多くの意味が見出せるし、後の傑作佳作を生み出す礎となったことに異論を挟む余地はない。
ファンならば確実に、観ておきたい一作だと思った。