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ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像のyuuuumiのレビュー・感想・評価

4.7
フィンランド・ヘルシンキで美術商を続けているオラヴィ。経営難に陥っている彼はある日『男の肖像』と名付けられた謎の一枚の肖像画に目を奪われるが…。

とにかく美術画とそれを彩る額縁まで美しい。
画廊に列を成していたり、下見会に出向いたり、世の中はこんなにも美術作品に溢れているのかと感動しました。

そしてオラヴィと孫オットーとの交流が素敵です。
印象に残ったヒューゴ・シンベリ作の腰の曲がった老人と手をつないでいる幼子の絵画。命を歩んできた者と歩みゆく者がテーマになった絵画は、この作品のオラヴィと孫を見ているかのようでもありました。

この作品、絵画についてとても奥深く触れ、その世界観や劇中に流れるどこか寂しさが漂う魅惑の音楽もまた美しく素晴らしい。

経営難であることから、とても苦しい選択を強いられるオラヴィ。オラヴィや孫、そして一人娘、それぞれの気持ちが痛いほどわかる。

隠された名画は時に人を不幸や悲劇に陥れる力を持っている。だけど、希望も託すことができる。
この作品は一筋縄ではいかない美術商の経営や、美術に関する知識や鋭い観察眼、オラヴィと家族との再生が描かれ、絵画についてもっと知りたくなる、とても素敵な作品でした。
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