ケーティー

花束みたいな恋をしたのケーティーのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
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モチーフの選び方がうまく、一つ一つのエピソードに映像になった時の面白さがある。それこそ、タイトル通り花束のような彩りをもった映画。


主要人物の趣味やエピソードを設定するとき、エピソードや設定として面白いかもあるが、映像作品の場合、映像になったときにそれが面白いかという視点も大事だと改めて思う。本作はそのあたりのモチーフの選び方がうまい。特に冒頭のミイラ好きの設定は秀逸である。ミイラ好きが映像になったとき、おしゃれな部屋で必死にパソコン画面いっぱいにミイラ展のページを映してチェックしたり、思わず彼氏がファミレスで店員から図録の写真を隠したり、そういうところは映像にしただけで面白いのだ。また、ミイラのモチーフを使うことで、二人の関係性もわかるし、映画全体として見れば、ミイラのように"もぬけの殻"だった主人公たちが彩られていく映画とみることもできる。このあたりミイラというモチーフの設定の仕方が秀逸なのだ。
そのほかにも、西麻布のカラオケ店、多摩川の光景、オシャレっぽい日常と葬式のシーンのギャップなど、砕けた言い方をすれば、映像でバエる要素が要所要所にある。それに加えて、脚本の坂元裕二さんが、どこに取材したのかわからないが、現代のリアリティを積み重ね、今の20代、30代に寄り添ってつくっているあたりもすごい。

それにしても、お酒を飲んだままお風呂に入って死んだのは本当なのか。それは、絹の母が言っていた「社会に出るってことはお風呂と一緒なの」からつながる比喩なのか……。


追記:映画を観る前に本作の脚本を読んでいたが、その時は映画のエンドロールで「たいせつ」が流れるのかなと想像してたので、別の曲が流れたのは残念だった。実際に流れた曲もいい曲なのだけど。