まちゃん

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のまちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
1990年、夢見る若者が集まる大都会ニューヨーク。ジョナサンはミュージカルの作曲家を目指している。大きな成功を掴めないまま気が付けば30歳を目前にしていた。焦る気持ち。夢と現実。青春時代の終わりへ向けて「Tick,tick」と秒針は容赦なく刻み続ける…。実在の作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝的ミュージカルを元にした作品。名作「RENT」の作者と言えば分かりやすいかもしれない。ピアノを弾きながら本人が演じたミュージカルの場面と日常の場面を絶妙に入り混ぜながら映画としてのアレンジに成功している。夢を諦めた友人、現実を見る恋人。周囲の状況は変わっていく。もう若者ではないという焦燥感。同世代と比べて抱くコンプレックス。作品のテーマはジョナサン自身が直面していた事であり、多くの人が共感出来る事だろう。それに加えて当時のニューヨークはエイズの恐怖に襲われていた時代。ジョナサンの友人達もエイズに倒れて亡くなっていく。「BOOM!」は死のメタファーでもある。ジョナサン自身も35歳で夭折している事を考えると予言的で複雑な気持ちになった。音楽に乗せて人生の岐路を描いた美しい秀作だった。
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