このレビューはネタバレを含みます
メキシコの闇救急車に密着したドキュメンタリー作品。
“闇救急車”なる初めて聞く単語に興味をそそられるわけですが、これが思ってた以上に複雑な話で面白かったですね。
人の不幸(事故)にたかって、利益を得ようとする姿はまるでハイエナの様でもあり。
無線を聞いて、事故現場へ直行する姿は、『ナイトクローラー』を想起するものがありました。
しかし、だからと言って、彼らが悪人かというと、そういうわけでもなく。
何だかんだ言っても、人助け自体は尊い行いですし、お金のない人には結果的に無償で医療を施しているわけですから。
ある瞬間は善人の様にも見えるし、ある瞬間では悪人の様にも見える。
この善悪の倫理観が絶えず揺さぶられ続けられるところが、本作の最もスリリングでエキサイティングな部分と言えるでしょう。
あれだけ働いても、経費を差っ引けば儲けは千円程度。
決して、ぼったくっているわけでもない。
機能不全に陥った市の医療制度から、こぼれ落ちた人達を救ってる面は確実にある。
でも、救助を受ける側からしたら、資格も設備も整っていない救急車に乗るのは不安でしかない。
実際、彼らは近くの病院よりも、キックバックがもらえる私立病院を優先したりもする。
決して白黒をつけられない…グレーな世界とは、まさにこの事を言うのだなと。
善悪のジャッジをする暇も与えず、救急車は猛スピードで駆け抜けていくのです。