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パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女のmaverickのレビュー・感想・評価

4.3
2022年の韓国映画。『パラサイト 半地下の家族』のパク・ソダムが長編映画単独主演を務めるクライムアクション。


まさに韓国版『トランスポーター』。韓国映画はカーアクションのレベルが非常に高く、それを存分に活かした作品性である。見せ方も秀逸でアイデアも富んでおり、激しく鮮やかなカーアクションシーンにアドレナリン全開。ハリウッドにも全く引けを取らない興奮の出来栄えに驚く。アクションが痛快なだけでなく、韓国映画らしい不穏さに溢れた怖さもウリ。悪徳警官はほぼヤクザな怖さで、何をされるか分からない恐怖に満ちている。ベースは『トランスポーター』や『ベイビードライバー』であるが、そこから独自の「らしさ」を追及している点が秀逸だ。『トランスポーター』と類似している点としては、主人公が車を使う運び屋で、天才的なドライビングテクニックの持ち主だということ。使用する車にBMWがあること。そして格闘でもめっぽう強いということだ。異なる点としては、主人公が若い女性であること。スケール的には小規模であること。依頼人の子供との心温まる話が描かれる物語であること、だ。最後まで鑑賞すると、『トランスポーター』とは似て非なるものだと分かる。愛すべき作品だ。

主人公を演じたパク・ソダムの演技には説得力がある。童顔で可愛らしい風貌でありながら、この役柄に全く違和感が無い。これまで数々の修羅場をくぐり抜けてきたのだろうなというのが表情から読み取れる。涼しい顔でハンドルとギアをさばく姿に天才的なドライビングテクニックを感じさせるし、いかつい男ども相手に頭脳と機敏さで立ち回る姿にタフさも感じさせる。さすが天才女優だなと感嘆した。主人公が保護する男の子を演じるのは、『パラサイト 半地下の家族』で社長一家の息子を演じたチョン・ヒョンジュン。二人は同作で家庭教師と教え子という関係性であり、今作でも息の合ったやり取りを見せて微笑ましい。なぜ主人公が男の子を助けたのかにも理由がある。主人公のバックボーンが物語にしっかりと反映してあるのが本作の良さだ。

ハリウッド映画であれば銃を使ってドンパチに発展するであろう肉弾戦も、設定を活かした上手い作り込みがされている。本作ではそうした細かいアイデアが無数に散りばめられていて飽きさせない。主人公が使う武器にしてもこだわりが見られる。銃よりも痛々しいのがまた何ともだ。


タイトルだけ見ればいかにもB級映画。でもめちゃくちゃ良作である。音楽が効果的に使われているという点では『ベイビー・ドライバー』にも通じる部分がある。アジア映画でもハリウッドに肩を並べるカーアクション映画が作れることを証明して見せてくれた。拍手喝采である。
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