新進気鋭の女性監督 エリザ・ヒットマン監督作品
バリー・ジェンキンスが製作総指揮を務め、第70回ベルリン国際映画祭の銀熊賞受賞作
予期せぬ妊娠をした17歳の女子高校生が親友と共に、中絶に両親の同意が必要ないニューヨークへ旅立つ姿を描く
監督は実際にアイルランドで中絶手術が受けられずに2012年に亡くなった女性がいたことから本作の着想を得たとの事ですが、男性として考えさせられるのはもちろん、女性なら特に共感できるような作りになっている非常に素晴らしい作品であり、紛れもない傑作と言える
学生の望まぬ妊娠からの中絶という『4ヶ月、3週と2日』を思わせる設定ですが、蓋を開けてみれば、17歳の少女の苦しい現実や、女性なら誰でも被害者になりうる男性による様々なハラスメント問題を盛り込みつつ、シスターフッドに富んだ超絶美しい圧巻のロードムービー
この近すぎない二人の距離感がこれまた絶妙で、より映画の瑞々しさに拍車をかけてくれる
映画でも何かとよく使われる17歳という年齢ですが、本作は17歳という年齢の少女の社会的な立ち位置が明確に提示され、親にも打ち明けられない17歳の少女にはあまりにも受け入れがたい苦しい現実には、男の自分が観ても胸が締め付けられる
徹底されたリアリズム演出は、まるでドキュメンタリーを観ていると錯覚させるほどのリアリティを生み出し、抑えられたセリフ量、極端に顔のクローズアップを多用した演出など、儚げで美しく、それでいて静かに揺れ動く息苦しいほどの彼女の悲痛な思いがひりひりと痛いくらいに伝わってくる
直接的な説明は一切排除され、核心にも迫らない
中絶するために行動する数日間のみを、淡々としすぎているほどにドキュメンタリータッチで描かれ、劇的なことなども何一つとして起こらない
しかしまるで二人の少女と共に旅をしているような気持ちにすらなってくる手持ちカメラを活かした美しい撮影は白眉
『Never Rarely Sometimes Always』という原題にもなっていますが、カウンセラーに打ち明ける中での四択で答えさせるという長回しのシーンは、あまりにも卓越した巧すぎる演出に唸るほかなく終始鳥肌もの
そしてなにより、シアーシャ・ローナンやエマ・ワトソンを彷彿とさせるような美しさを兼ね備えた主演二人の、シドニー・フラガンさんとタリアライダーさんの素晴らしく静謐な演技あっての映画であることは明記しておきます
万人に受けるようなエンタメ作品とはかけ離れていますが、この観客に委ねた極めて映画的な語り口はあまりにも絶品
『ブルックリンの片隅で』も然りですが、エリザ・ヒットマン監督は今後もチェックしなくては👏🏻
〈 Rotten Tomatoes 🍅99% 🍿48% 〉
〈 IMDb 7.4 / Metascore 91 / Letterboxd 3.9 〉
2021 劇場鑑賞 No.046