ひでやん

17歳の瞳に映る世界のひでやんのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
3.7
孤独と決意、表情で語る17歳。

邦題からはキラキラとした青春の輝きをイメージしたが、木で鼻を括ったような少女の瞳は憂いを帯びていた。主役のオータムは時折口角をわずかに上げる程度で全然笑わない。その無愛想な表情には孤独感や誰にも言えない思春期の悩みが滲んでいた。

全然笑わない。そして全然語らない。見る側が最も気になる「誰に、どのように」という描写は一切省かれていて、原題の「一度もない めったにない 時々 いつも」という4択を長回しで撮る事によって、オータムの悲痛な思いが浮かび上がる。ずっとオータムは笑えなかった。語れなかった。

冒頭の音楽祭かな?その歌唱中に「メス犬」とヤジが飛び、それを聞いていた義父がわざわざ飼い犬を「メス犬」と呼んで可愛がる気持ち悪さ。相手はお前か?と思うと、そりゃあ母に言えない苦しみを抱えていたことだろう(違うかもしんないが)。バイト先ではスーパーの上司が、早退したいというスカイラーに対して「忙しいから」ではなく「寂しいから」と言う気持ち悪さ。男はどいつもこいつも性的対象として少女を見る。

鼻ピアスを開けるオータム。腹を殴るオータム。その姿が左右反転して映る鏡の中の自分は「自分の身体は自分で決めるんだ」と言っているようだ。望まぬ妊娠ゆえの中絶…田舎の病院では中絶反対派の先生がビデオで脅す。ならば中絶権利擁護派が多い都会へと旅立つ2人の少女。

妊娠に気付いた少女が中絶するまでの姿をカメラが追いかけたドキュメンタリーのようだった。静かに淡々と描かれる少女の旅路、寄り添い続ける従姉に感謝の言葉もないが、金の為に我慢している従妹の手をそっと掴むシーンに言葉はいらなかった。
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