白瀬青

PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTORの白瀬青のレビュー・感想・評価

4.5
アニメシリーズ三期の完結編ということで陰謀と不審と裏切りの薄暗いインテリ合戦の行方を確認しに視聴しました。
しかしこの完結編劇場版、実に良い意味で期待を裏切り度肝を抜く一本です。
のっけからのノナタワー占拠、システムダウン、そこにサメのように解き放たれる潜在犯と有毒ガス、「マスクなしで不要不急の外出をしたら死ぬノナタワー」の中、ハッキングされたシステムを、公安局職員と都知事の人質を、奪還すべく公安局刑事課と外務省行動課が共闘する迫力のアクション映画として完成していたので。
そう、アクション映画です。体感八割アクションくらいの怒濤の立てこもりテロ迎撃アクション。

信頼し合う主人公バディのキャラクター性と絆はテレビシリーズでの心配は何だったのかと思うほどしなやかで爽やか、今まで仕事柄皆が傷ついていくのを後ろから支援することしかできなかった志恩とカリナの歯がゆさの掘り下げと痛快な反撃も相俟って非常に愉快。話が難しくなってきた頃合いには惜しげなくバトルシーンが入って飽きさせない画面の華やぎもあり、まさに雨上がりのような後味。

三期の批判として「これでは三期は劇場版に誘導するための壮大な予告じゃないか」というのを聞いたことがありますが、まさにその通りだと思います。
完全に本編はこの劇場版であり、三期はチュートリアルに過ぎなかった。
しかし劇場版にはほぼこれまでの説明は入る余地がないため、三期がなければ劇場版のみでは作品として成立し得ないとも思う。
いわばハイアンドローがテレビシリーズから劇場版へ繋がることでフルパッケージにはなるが、エンタメ作品としては映画だけのほうが凝縮されているようなそんな構成になっています(私個人的にはハイローはテレビ版が一番好きなんですけども)。

なにより梓澤というラスボスがよかった。
槙島、鹿矛囲、ニコラス――「全体主義的な歪んだ社会にさらに歪んだ価値観をぶつけてくる美しくも孤高の思想犯・政治犯」の居並ぶ歴代ラスボスの中でこの梓澤という男は、初めての「シビュラを愛するただの人間」であり、人となり、動機、いずれを取ってもエゴイスティックな小物にすぎない。しかしその小物は、モブまで含めた公安局総勢+外務省行動課が束でかかってきてさえ一歩も引かない知能を持つ。実に最悪の小物である。
PSYCHO-PASSというシリーズではなくとも斬新なこの敵に、PSYCHO-PASSシリーズの更なる拡張の期待を感じてわくわくしました。
ラストの新公安局人事編成にも。
白瀬青

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