白瀬青

ユンヒへの白瀬青のレビュー・感想・評価

ユンヒへ(2019年製作の映画)
4.3
「あなたは私のことを忘れてしまったかも。もう20年も経ったからーー」
日韓のふたりの女性が想い合い、しかし別れて忘れようとした想いをその娘が繋ぐ、雪に降り込められた恋心の物語。岩井俊二に影響を受けたという繊細で美しい映像で、しかし日韓の女性の置かれたそれぞれの複雑な社会事情をもしっかりと織り込んで描かれる。

当時の家族の同性愛への厳しい反応のために「高校生だけの恋」で終わったユンヒとジュン。ユンヒは結婚させられ、ジュンは日本に帰り20年ーー「今でもあなたの夢を見る」ひそかに書き続けた出せない手紙のひとつが、事情を察した叔母の手で投函される。

受け取ったのはシングルマザーの母を心配するユンヒの娘。娘は母の恋をかなえるべく、母娘の卒業旅行に、ジュンの住む北海道小樽をねだる。
降り積もる雪に想いを重ねるのはやや陳腐だとはいえ(globeか!)繊細な脚本を彩る一面の雪景色が美しく、北海道の根雪ならばそれは本当に雪解けを願えども一向に消えてなくならない深い想いだろう。
いつかまた隣で同じ夢を見てほしい。
白瀬青

白瀬青