はる

さんかく窓の外側は夜のはるのレビュー・感想・評価

さんかく窓の外側は夜(2021年製作の映画)
4.0
あまりこれまで観てこなかった系統ではあったけど、気になっていたので観たところ、意外な転がり方をする作品だと感じた。それは良い意味での意外性だった。

PG12指定らしい描写が導入で続いたのでキツいなと思っていたが、それが第一幕にとどまっていて、ホラーからドラマに移っていく。
冒頭で三角を冷川が見つけるシーンでは行き交う人たちがすべて黒ずくめで、面白い絵作りだなと思ったが、三角の回想でも子供たちは同様に黒ずくめだった。彼らの他者への心象を表しているのだろうか。リアリティのレベルも変わってくる。

原作は漫画ということだが、「死者が見える」というのは映画的な仕掛けで、『シックスセンス』という作品もあるが、やはり『シャイニング』を思い出すし、より近いのは『ドクター・スリープ』だろう。非浦の能力は「呪い」というよりテレパシーによる意志の操作にも見えた。“シャイニング”を持つことで他者との共感や距離感がどこかズレてしまった彼らの再生の物語になっている。

三角が見えているのは悪意によって死に至った人たちだ。しかも彼らの過去も見える。今作では悪意や孤独がテーマになっていると思うし、それは現代社会の問題でもある。特に子供たちの問題として、背景にある大人たちの悪意が見える。だから半澤(この名前の役を滝藤賢一が演るのは面白い)のブレないスタンスが今作の良心になっている。母親としての和久井映見は癒しだった。
そういう母親がいたから三角は他者への悪意を育てなかったし、あの結界での半澤の役割と同じで、冷川と非浦の暴走を止めることが出来た。今作では三角、冷川、半澤という3人、そして三角、冷川、非浦の3人の関係性があった。観る者、観られる者、観ない者。信じる者、信じられる者、信じない者。そういう関係性がそれぞれの立場や自分を知ることに繋がった。彼らの成長が見られたラストは素直に感動してしまう。

あの「貯蔵庫」の描写は彼ら、彼女たちの心に植え付けられた悪意や孤立感、恐怖心に見えた。それらは克服できるものだ。そういうメッセージに感じた。
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