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パピチャ 未来へのランウェイのskm818のレビュー・感想・評価

3.9
アルジェリアの女子大生が自作の服で友人たちとファッションショーを開催しようとする話とその顛末。女性への抑圧や暴力がこれでもかという酷さで描かれているが、同じくらいシスターフッド的友情も描かれる。舞台は90年代。いちおう自由な服装や行動は許されているが、保守的な考え方の人は多く、銃を携帯した過激派がいきなり市民に襲いかかる事件があとを絶たないという状況やね。女子大の門限破りはどこにでもあることだけど、ここでは命懸けなんだよな。寮生活をしてるってだけでふしだらだと殴られ、ジャーナリストの姉は家の前で撃ち殺される。性欲を抑制する目的で副作用の強い薬を飲み物に混ぜて毎日飲まされる。フランス語で授業を行う教授は突然乱入してきた女たちに麻袋を被せられて拉致される。バスに乗っていたら乗り込んできた男がヒジャブをかぶることを強制する。町中に女は正しい服装をしろというビラが貼られる。恋人ですら結婚して海外に行くことを勝手に決めていたりするんや。よく利用してなじみになってる店の男や門番も味方ではない。むしろ彼らが通報して惨劇に繋がってんだよね。ショーに参加していた子も見物していた子も何人かは殺されてしまい、残った子たちは寮を出ることになる。結婚前に家族の決めた婚約者とは別の男との子を妊娠した友人は殴られて家を出される。この子は門限破りなどせず肌も出さずスカーフをいつもかぶっている敬虔なムスリマなんだけど、この子も大事な友達で、そして彼女も自分の置かれた状況に満足しているわけじゃないのね。なんでここまであれこれと制限されなきゃならんのか。でも主人公は自分の生まれ育ったここを愛していると言う。戦わねばならないが友人や家族のいるアルジェリアに満足してると言う。理不尽なのは制度であって故郷ではないんじゃ。愛しているからとどまって戦うんだな。
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