アタフ

あの頃。のアタフのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
4.4
『ハロプロは弱った心にふっと入ってくる』誰の言葉だったかは忘れたが、この映画での劔樹人にとってのハロプロがそうであると同時に、私にとっても同じだった。
遡ること11年前、私が高校三年生の夏のことである。その時の私は学校にも馴染めず、友達もほとんどおらず、受験勉強にも身が入らない、鬱々とした生活を送っていた。そんなある日、youtubeで昔流行った曲を聴いていたところ、「そういえば昔モーニング娘。って流行ってたよな…」とモーニング娘。とyoutubeで検索したことが、私がハロプロという沼に入り込んでしまったきっかけであった。
「今のモーニング娘。ってこんなに凄いパフォーマンスをしてるんだ…」モーニング娘。をただカワイイだけの女の子集団で、アイドルなんて下らないもの、そう思っていた自分にとって、動画に映るモーニング娘。のパフォーマンスは衝撃だった。そしてそのカッコよく、可愛く歌って踊る輝かしいアイドルたちが、私の鬱々とした心にふっと入ってきたのである。なんだかわからないが彼女たちのパフォーマンスに無性に感動したのだ。
以前の私だったら、「アイドルなんて応援している奴はバカ、どうせ彼氏いないとか言って裏ではヤリまくっているのに」とか思っていたが、そういう問題では無かったのである、その歌って踊る輝いている女の子達を見ることで、自分の心が満たされ、この世界も捨てたのんじゃないと思わせてくれたのだ。
鬱々としていた自分の心はモーニング娘。によって潤され、あれよあれよとハロプロにハマっていき、モーニング娘。から始まりベリーズ工房を知り℃-uteを知り、Juce=Juceの結成に沸き、アンジュルムの改名に動揺し、今ではBeyooooondsにハマっている。ハロプロは人生に潤いを与えてくれる、私にとってはハロプロはそんな存在であり、今となっては人生に欠かせないもの、そんな存在になっている。


そんなハロプロを題材にしたオタクの映画が公開される、それも今泉力哉監督となると、これは見逃すわけにはいかないでしょう。
冒頭、あややの『桃色片思い』を聞き涙を流す松坂桃李に共感MAX
その後ハロプロにハマっていき、松浦亜弥からモーニング娘。ベリーズ工房などにも手を広げていくように、きっかけは1つだったけど、ハロプロを知るうちに他のグループも好きになってくるのはオタあるあるではないだろうか。映画全体の構成としては、1つの大きな筋道があるというよりは、オタ活をする中でのエピソードの羅列となっていて、物語の推進力は少ないなと感じた。ハロオタであれば各エピソードに共感し、道重がシャボン玉~のセリフしかないことに対する言及や、CDショップに「あぁ!」のポスターが貼ってあるところなど、小ネタや話の内容もよく理解できてとても楽しいのだが、ハロプロに興味がない人にとっては、多少だれてしまうのではないかとも思った。
後半は病気のエピソードが入るため、話の推進力は保たれるのだが、主人公劔樹人にとっての人生という部分はちょっとぼんやりしてしまっていて、やはりお話として大きな一本道があるわけではないかもしれない。
また、あの頃というタイトルでありつつ、今が一番楽しい、そんなメッセージを持つ作品ではあるが、後半よりも、前半のあの頃のほうがとても楽しそうに描かれているため、そのメッセージは伝わりにくいと感じたし、やはり後半の主役はコズミン(仲野太賀)であり、松坂桃李はちょっと存在感が薄かったかなと。そのような部分でも"今が一番楽しい"というメッセージは伝わりにくかったかなと。

だがやはり、ハロオタにとって楽しい映画であることは間違いなく、オタならば共感してしまうシーンが数多くあるので箇条書きで。

・大学の学園祭にて、彼らがハロプロについて語るシーンの中で踊っていた曲は藤本美貴『ロマンティック浮かれモード』という曲なのだが、この曲はハロオタにとってはいわば"国歌"のような曲であり、この曲が流れると皆テンションが上がり、一緒に盛り上がるのだ。
この曲が流れ始めて恋愛研究会の皆が歌いだすシーンがあるが、オタであれば気持ちが分かるはずだ。また、この曲で踊るあのキモオタ踊りは、youtubeなどでも検索すると当時のオタたちが踊る映像が見れるので、見てみてほしい、たぶん引くから。


・握手会での松浦亜弥役を演じていた女の子は、現役のハロプロメンバーでBEYOOOOONDSの山﨑夢羽という子で、以前から松浦亜弥に似ているとオタ内では評判になっていた子だ。実際この映画でのシーンでは、マジで似ていたし、松浦亜弥役としては完璧だったと思う。ちなみに山﨑夢羽が松浦亜弥の『桃色片思い』を歌う動画がyoutubeあり、これも素晴らしいのでぜひ見てみほしい。


・恋愛研究会のメンバーが歌うシーンがあり、エンディングでも流れる曲はモーニング娘。の『恋ING』という曲で、オタ内では有名で人気のある曲だ。カップリングの曲ではあるが、今でもハロコンなどでも歌われたりもする人気の曲。この曲がエンディングに来る辺りもハロオタ向けの映画だなぁと感じた。

ともあれ、ハロオタとしては数々のシーンでグッとくるシーンががある、ハロプロ愛のある映画だと私は感じた。いつものレビューとは違い、映画オタとしてではなく、ハロオタ目線でのレビューとなってしまった。読み返すとマジでキモイのだが、自分の気持ちには嘘をつけないので、まあしょうがない。また、この映画が自分にとって特別な映画となってしまったことは間違いない。
アタフ

アタフ