sanbon

トゥモロー・ウォーのsanbonのレビュー・感想・評価

トゥモロー・ウォー(2021年製作の映画)
3.7
硬くて素早いうえに飛び道具持ちとかチートすぎぃ!

今作は、これまで何度も擦られまくった題材に、ほんの少しのアクセントを効かせる事で、食べ慣れた味でも飽きさせることなく完食へと誘う、言わばカレーのような作品となっていた。

カレーと言えば、隠し味にウスターソースやコーヒーの粉末を入れてみたりと、家庭や店舗によってもアレンジが多岐に渡る程間口の広い料理であるが、今作はベースをオーソドックスな「SFサバイバル」としながらも、そこに「未来へのタイムスリップ」という新機軸の要素をプラスオンする事により、内容面に一味違った後味を与える事に成功していた。

そのうえで今作は、地球に突如として出現した「ホワイトスパイク」という怪物に、人類存亡を賭けた戦いを挑む物語となっているのだが、その怪物が人類を脅かしているのは30年後の2051年という設定であり、世界人口が50万人を割り人類が絶滅寸前に追いやられた事で、未来人は"ある条件"を満たした者を過去から呼び寄せ、未来での7日間の派兵を強いる事となる。

そしてこのホワイトスパイクだが、見た目が凶悪なのは勿論、これなら人類が滅ぼされかけてても納得と思える程の凶暴性をよく演出できていたと思う。

なにせ、その巨躯からは想像もできないほどの"俊敏性"と、銃弾など全く意に介さない"頑強さ"に加え、備わった2本の尻尾からは鋭利な槍状の物質を無尽蔵に"高速発射"可能なのだから、あれではいくら人類が武装を固めても崩されるのは時間の問題だというのが、映像を通してひしひしと伝わってくる。

また、演出面にも一工夫があり、小隊を組んで目的地まで向かう序盤のシーンなどは「FPS(ファーストパーソンシューティング)ゲーム」のイベントシーンを彷彿とさせる映像の運び方をしており、これによりエイムのし辛さや弱点を狙うことの難しさをより視覚的に視聴者側に訴える事が出来ていた。

しかも、体臭も強烈な汗のにおいがするらしく、生理的不快感を増すためのお膳立てにも抜かりがない。

ありふれた映像作品において、このような敵の醜悪さは作品を楽しむうえでのなによりの生命線となるのだから、今作はその点に関しては及第点といったところだろう。

そして、30年後といえど特別な未来感を演出していないのも逆に良かった。

急ごしらえとはいえ、タイムスリップの技術が確立されている未来の話なのだから、出そうと思えばもっと未来的な武器やら防具を出せた筈なのだが、今作で登場する武装はまるっきり現代からの進歩がなく、それどころか物資が不足しているのか、ろくな装備品も与えられずに私服の上に防弾ベストを着させられただけの状態で戦場に駆り出されていく。

強制的に未来に送り込まれて、年齢も性別も関係なく訓練も何もないまま戦線に放り出されるその理不尽さには、自然と緊張感が生まれていたし、まさかのタイムスリップの失敗で戦わずして命を落とす兵士(一般人)の描写はとても残酷に感じた。

そして、この時間軸が関係したストーリーにおいて、ホワイトスパイクから地球を救う方法と、最初のホワイトスパイクの出現地点という物語の核心に迫る重要なファクターに対して、上手くその設定を活かしつつ物語を構築していたのは、今作ならではの要素として素直に面白いと思った。

安易に要素ばかりを上乗せして、それをまともにストーリーに取り入れられていない作品もある中で、ちゃんとその要素を核心に絡めて物語を創造出来ている時点で、今作の作品としての最低限の価値は保たれていると思う。

しかし、その反面雑に感じるストーリーの運び方をしている箇所もいくつかあり、中でもホワイトスパイクを倒す切り札の製造に、主人公の存在が全く絡んでいないのはもうちょっとどうにか出来ただろと言うほかなかった。

主人公は、軍隊上がりの科学者であり科学的な知識を備えた人物である事を冒頭からさんざん刷り込んでいたのに、いざそれを発揮するべき重要な局面になっても、全然貢献していなかったのは流石に脚本をおざなりにしすぎであるし、そもそもその切り札がきちんと切り札として活用されない展開にしてしまっているのも、シーケンスとしては実に煩雑である。

また、未来の娘が語った主人公の過去(主人公にとっては未来の話だが娘にとっては過去の話)が、主人公が未来から戻ってきたあともなんにも関係してこないのも、如何にも重要そうな説明だっただけにかなりの消化不良に感じたし、この邂逅は冒頭に述べた派兵の為の"ある条件"をどう考えても破っている気がしてならなかった。

今作は、よりにもよって上記で挙げたような大事な場面でそこそこデカめのちょんぼを何故かやらかしているのだが、それ以外は普通に楽しめる出来であるのだから尚更もったいない。

そのため、誰もが言うように何も考えずに脳死状態で観る分には満足のいく作品となっているだろうが、つまりそれは過度な期待はしないのが大前提という事であり、いくらテンポよくストーリーを展開させていても、観ている側に引っ掛かる点を与えてしまえば、せっかくのその努力も台無しというものだ。

ちなみに、僕のカレーはホールトマトとルーを2種類使って、酸味とコクを強めに作るのが最近のトレンドである。(どうでもいい)