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キューティーズ!のkoheiのレビュー・感想・評価

キューティーズ!(2020年製作の映画)
3.5
【あなたは誰なの?】

Netflixでいま賛否両論が巻き起こってる今作。
少女に性的な振り付けのダンスを踊らせてるとして解約署名が起こってるのが話題だけど、個人的には映画としてとても良く感じた。

多感な時期である11歳。宗教の教えが根強い家庭で育った主人公アニにとって肌を露出し髪を染めメイクをする友達は自身の憧れであり、ダンスは自己表現が出来る大切な世界だったんだろう。
初潮を迎え、身体的にも大人になっていき色々な感情が渦巻く。

出身国が不明だったけど、一夫多妻制の家庭に生まれたが為に母親は自分の夫の第2妻との結婚を涙を堪えながら祝わなきゃならない状況、アニには宗教や文化は呪いであり、目の前で家事をする母は自分が将来なるかもしれない最悪の未来図だ。

父親の結婚式が近づく、クローゼットには式用のドレスがいつも待ち構えてる。
宗教を重んじる親戚、アニの変化に戸惑い涙を流す母、そして式と同時に近づくダンス大会。

時に友を蹴落とし、時に孤立し、自分の行動も過激さを増す。

やるなと言われるほどその方向に向かいたくなるのが思春期ってもので、それが売春とかじゃなかっただけこの映画はまだ良かったかなと。(アウトなラインは超えてる気もするが)
多分賛否両論起こるのは承知の上で作られてるだろうし、2時間にも満たない尺の中でよくここまで色々な感情の動きを詰め込めたとも思う。
多分、ダンスチームキューティーズのメンバーのアニ以外はファッションとしてあのセクシーな振り付けや不良まがいの普段の振る舞いをしていただけなのに対し、アニ自身は本当に1人の女性として認められたい願望が強かったんだと感じる。

家に帰れば女はどう在るべきかという価値観の押し付けがあり、まだ11歳なのに花嫁修業をさせられる。最初は大人になることを嫌がっていたのに、キューティーズに入ってからは性的な承認欲求にかられ、自分は子供じゃない!と振る舞うようになった。
その矛盾が思春期ならではだと思うし、その感情の揺れがとてもよく伝わった。

確かにダンスの振り付けやダンスを映す時のカメラワークにはヒヤヒヤするものを感じるけど、そのダンスのシーンは全体のほんの一部でしかないのも事実、問題に発展する程のインパクトだったのならそれはある意味狙い通りかもね。

最後は穏やかなハッピーエンドって感じ。

ゆっくりじわじわと感情が交差する展開だから気付いたらラストスパートに向かっていてとても観やすかった。

ダンスシーンだけではなく、全体を観て欲しいかな。
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