こたつむり

CODE46のこたつむりのレビュー・感想・評価

CODE46(2003年製作の映画)
3.3
♪ もしも罪を犯し 世界中敵にまわしても
  あなたと眠る夢を見続けてたい

気怠くて、切なくて、儚い物語でした。
色合いも脆くて淡く。気を許せば簡単に大気に拡散することでしょう。

ゆえに食べ応えはありません。
刺激物に慣れたら無味無臭に感じるかもしれません。

でも、それが良いのです。
一度壊れて管理された未来に在るのは“残滓”。汚れた手で触れたら芥と見分けがつかなくなるほどの分量しかないのです。だから、希少。大量生産品に慣れた日常にはない味わいでした。

きっと、そんな世界では国なんて不要なのでしょう。実のところ、差別や区分よりも不要なのは国境という存在。大地を大切にしても、魂まで縛られる必要はなく。様々な言葉が混じった本作は見事なまでに“理想的な未来”を提示していました。

しかし、理想はあくまでも理想。
乾燥した未来の中で掴めたとしても…それでは遅いのです。失ってから初めて気づく…人類は何度同じ過ちを犯せば良いのか。いい加減に歴史から学ぶべきだと思います。

それに行き過ぎた管理は確実にディストピア。
CODE46(規則46条)で定義されたとしても、魂を縛ることなんて出来ません。

そう。それが本作の主軸。
魂が惹かれるままに指を伸ばすことの美しさ。
正直なところ、SFというのは舞台装置に過ぎないと思います。

この割り切り方、嫌いじゃないですね。
砂漠の向こう側で揺れる街並みと、実際に掴むことが出来ない心。その対比が芸術の醍醐味(とか書くと大袈裟かな)。環境音楽のような旋律も含めて、泥濘のような揺りかごが心地良い物語でした。

まあ、そんなわけで。
SFとして捉えるのではなく、アートな恋愛として向かい合ったほうが良い物語。疲れたときに臨むと“アルファ波”がビンビンと出るので注意が必要です。勿論、期待値は低めが吉。確実に人を選ぶ作品だと思いますので。
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