よくある家族映画かと思って敬遠してたら全くそんな事はなく、認知症患者の一人称視点で世界を切り取る最恐の「信頼出来ない語り手」ホラーだった。。
過去と現在、虚構と現実が曖昧になり時系列や人物配置も入り乱れる。この世界全体が狂っているのでは?と錯覚させられる不安と恐怖。
映画そのものの構造を最大限活かした編集と超現実的な撮影で描かれる室内劇。いずれは自分や家族もアンソニーのように何もかも忘れてしまうかもしれないと思うと、途方もなく苦しくて涙が止まらなかった。腕時計が示す時間以外何一つ信じられなくなった男が最後にすがるものが母親というのも…。傑作。