はる

ビバリウムのはるのレビュー・感想・評価

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.9
ユニークな世界観だけど、物語自体は淡々と進んでいくので、内容の気持ち悪さが緩和されている。あまり怖い方にいかないので助かったというのもある。
イモージェン・プーツがとにかく良くて、ジェマが変わっていく過程を丁寧に見せてくれている。

基本的にはホラー、ミステリーのジャンルになるはずだけど、今作はSFの成分もあって、そこを考えるのは楽しい。
カッコウがなぜ托卵するのかよくわかっていないということだけど、同じように彼らも理由はなく「そういうものだ」としてあの形式をとっているのかな。知性はあっても同種に対してさえも情を感じさせないから、子に対してもそうだろう。あの異世界の環境を作れるくらいなので、人類への敵意や支配欲があれば違うやり方になるかと。だから彼らは人間を純粋に托卵のための存在だと捉えているのかな。

成長が早く、寿命も比例して短い。老化する前に寿命が尽きる彼らが子孫を残していくために作ったシステムなのだろう。まあ深く考えると厳しいなとは思う。

物語の展開に意外性は薄く、概ね予想通りに進んでいく。あの子役から青年になった時の「絶妙な配役」で笑ってしまうが、その彼が歩道をめくって地下に降りていくときには「そんな作りなのか」と今作で一番驚くシーンだった。動きが虫っぽかったね。

トムが死んでいくところをあのように長く見せるのもユニークで、また面白い作家が出てきたなと思う。
はる

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