Jun潤

警官の血のJun潤のレビュー・感想・評価

警官の血(2022年製作の映画)
3.9
2022.11.17

予告を見て気になった作品。
日本の小説を原作に韓国で制作されたクライム・サスペンス。
個人的には既にクライムやアクションでは邦画は韓国に勝てないことを痛感しているので、邦画では見れないであろうものを期待して今回鑑賞です。

警官のチェ・ミンジェは、先輩刑事の恐喝紛いの捜査を告発し、組織内の居場所を失くした。
そんな彼の処分を監査部が引き受ける。
チェ・ミンジェに課された任務は、裏組織との汚れた繋がりを明かすための内偵だった。
対象となる人物はパク・ガンユン刑事。
小規模の犯罪を見逃し、自身にとって有用な犯罪者を見逃しながら、巨悪を討つため、怪しい取引を繰り返すパク・ガンユン。
チェ・ミンジェも最初は彼の行動を監視し疑いの目を持っていたが、パク・ガンユンからの信頼、彼が知る父の姿、そして凶悪な犯罪者を逮捕することで確かな警官としての責務を果たす内に嫌疑は無いものと思うようになっていく。
しかし、警察は清廉潔白な組織を保つために、巨額の捜査費を工面する謎の“上”の存在は目障りになってきたために、パク・ガンユンを陥れようとしていく。

日本のコンテンツが海外パワーを得て作品に昇華されるとここまでになるのか!
個人的な所感だと日本独自の発展を遂げている組織対人間の構造、何が正義で何が悪なのかを問うメッセージ性、人間の裏と表の顔、そんな濃厚な人間ドラマが、迫力と臨場感のある画面と真に迫る演技によってダイナミックに表現されていました。

警察に求められているのは、清廉潔白な組織なのか、巨悪を確実に討つことなのか。
内部から見れば違法の捜査を行う警察失格の人間でも、外部から見れば巨悪を討った英雄として見られる。
現実の警察組織や、ニュース等で取り沙汰される事件を解決に導いた人物の存在について考える機会はそうあるものではありませんが、こうして作品を通して、正義のための違法捜査の是非や、人間として守るべきルールの存在理由についてなど、一口に答えは出せないし、一方の意見のみを鵜呑みにもできない、そんな社会的問題提起をしてくれるのも、エンタメの役割だったりするのかもしれませんね。

中身的には『孤狼の血』シリーズのような作品群の一つで、早々にオチを読めそうな感じもしますが、如何せん韓国映画パワーが加わると予想させる間を与えない展開の目まぐるしさ。
犯罪の規模や犯人の狡猾さ、それらを演出する構成や役者の演技でもって、確かな力強さのある韓流クライム・サスペンスとして安定以上の仕上がり。

正直な話、もっと話を単純にして映像にフィーチャーしてもよかったのかなと、終盤の展開の詰め込まれ具合を見て思いますし、終盤にポッと情報を出すぐらいなら序盤から描写を散りばめておけばよかったのにななんて思ったり。
観る側の予想やそれまでの展開から大きく翻してくるストーリーにはグイグイ引き込まれましたが、どうにも情報の出る量が場面によってバラつきがあり、頭がパンクしそうになって映像に集中しきれないような印象が残りました。

韓国人俳優には疎いので、重要人物への配役やキャラの顔を使った伏線演出に気付けなかったりしてしまったので、光栄なことに日本人原作者作品なことですし、邦画版リメイクも観てみたいところですね。
Jun潤

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