未島夏

破壊の日の未島夏のレビュー・感想・評価

破壊の日(2020年製作の映画)
3.7
「お祭り」は始まるまでの期待に満ちた期間が一番楽しいとよく言われるけど、この映画は正にその通り。

一度始まってしまえば、轟音と絶叫の波に取り込まれ、あっという間に過ぎ去った。

この年の、この日に、この映画を体感する喜びを、もっと浴びていたかった。



計り知れない労力と執念から生み出されたエネルギーに圧倒され、敬服しながらも、同日に開催されるはずだったもう一つの「お祭り」への少々安易な批判に帰結していったのが残念でならない。

「お祭り」が「お祭り」に一方向的な視点で野次を飛ばしても、そこには何も生まれない。

それぞれの「お祭り」にある穢れを公平に露わにして纏めて祓う様なーーー善悪が複雑に入り乱れる社会の「狭間」に立って今後を指し示す、そんな姿が見たかった。



とはいえ、「二〇二〇年」をこれほど克明に表現した恐らく最初の映画であるこの作品は、逆風吹き荒む劇場の重い空気を根こそぎ換気していく程の力に溢れている。

この『破壊の日』を機に、今後はもっと「風通しの良い」作品が増えますように。

祭りの後の寂しさを祈りに変えて。
未島夏

未島夏