あーさん

シネマ歌舞伎 三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たちのあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

シネマ歌舞伎 2022 第6弾

三谷幸喜の作品は個人的に当たり外れがあるのだが、、これは嬉しい誤算!

原作は、去年亡くなられた漫画家みなもと太郎氏の歴史物。18世紀末、伊勢の船頭・大黒屋光太夫ら一行が大嵐で遭難、10年もの歳月をかけてロシアから帰国の途に着くまでのお話。
おや?どこかで聞いた話。。昔観た緒形拳主演の"おろしや国酔夢譚"(1992)にそっくりではないか⁈ 何故か、一人で映画館に観に行った覚えが。。(こちらは井上靖・原作。実話を元に色んなバージョンがあるよう)
大黒屋さんとは、ご縁があったのだなぁ。

今年の大河ドラマ"鎌倉殿の13人"が好評で話題になっているが、そちらにも出演している坂東彌十郎、市川猿之助、片岡愛之助らが個性豊かな乗組員達を演じる(ラブりん、カッコイイ!)。
ドラマの方でも薄幸の貴公子・源義高役で注目された松本染五郎は、今作の2019年当時17歳でありながら、語学堪能な磯吉役で確かな演技と若者らしい瑞々しさを振りまいていた。歌舞伎界の若き期待の星!
主人公・大黒屋光太夫に松本幸四郎。真面目で誠実な役柄が似合っていた。そして、今作で三代共演(松本白鸚、幸四郎、染五郎)を果たしているのも興味深い。
三谷幸喜がセリフでちょいちょいそこをいじるあたりは、少々しつこかったけれども。。(まぁ、ご愛嬌 笑)

乗組員一人一人のキャラクターもしっかり描き分けられていて、悲劇に向かっていくのに、コメディ要素がふんだんに取り入れられているので、劇中ではそこまでシリアスにはならない。
おじさん達がわちゃわちゃする感じは、沖田修一監督の"南極料理人"が思わされて、私好みの世界観!犬ゾリのシーンは、キャッツならぬドッグス?笑 とても楽しい!のだったが、、

私が今作でとても素敵だなと思ったのは、ロシア人女性マリアンナ役の坂東新伍さん♪彌十郎さんのご子息だという。スッと長身で、ほっそりしたドレス姿がまぁ美しいのなんの。。
ユーモラスなセリフもお手の物で、コメディもやれてしまう所は、玉様や七之助さんにも通じているようで、これは先が楽しみな方を見つけてしまった!

あとは、一人だけ歌舞伎役者でなくキャスティングされていた八嶋智人が良いスパイスとなっていた。

舞台の上演時間が3時間ほどのものを、シネマ歌舞伎用に2時間20分に編集しているそうだが、全く違和感なく楽しめた。

幕切れは、それまでが賑やかだっただけにとても切ない。。終わってからも、じわーっとくるものがあった。

10年もの時を経て、乗組員達それぞれの望郷の思いが胸に迫る。。

今作が歌舞伎なのかと言われれば、ほぼ歌舞伎役者による舞台演劇…?はたまた、サブタイトルにもあるように、三谷かぶき?
しかし、ふざけ過ぎる一歩手前で何とか踏み留まり、いつものように暴走しなかった三谷幸喜を褒めてあげたい!笑(ちょっと危ない箇所もあったけどね)
安定感のある歌舞伎役者陣のキャラクターの演じ分けが、お見事!素晴らしい。

こちらも、前作同様、笑って泣けてバランスの良い作品になっております♪歌舞伎初心者、演劇好きな方には特にオススメ。
王道の歌舞伎がお好きな方は、これが歌舞伎⁈と思われる可能性はあるけれど、とにかく楽しい!個人的には、アリ!!


ここからは、いつもの自分語りコーナー。。
お時間ある方だけお付き合い下さい🙇‍♀️




*ひとり言(少々長いです…💦)

何本レビューを書いたかは、いつからか数えなくなっていたのだけれど、1年に一回Filmarksを始めた日は、何かしら記念日だと意識するようにしている(去年はお盆に父が亡くなったので、それ以降は更新を数ヶ月お休みしていた。。)。
今日は、始めてから満7年。8年目に入るのだから、時が経つのは早いものだ。
高校生だった(Filmarksを勧めてくれた)上の息子は社会人、中学生だった下の息子は大学生。それぞれ思春期のトンネルを抜け、やりたいことを見つけて日々頑張っている姿を見ていると感慨深く、私も歳をとるはずだ…などと思ったりする(下の息子は、社会人になるまでまだ少し心配だけれど…きっと何とかなるだろう!)
ここまで本当に色々あったけれど、道に迷った時にFilmarksで出会った映画やフォロワーさんに教えてもらったことや励ましてもらったことを思い返すと、前にも書いたけれど、さしづめ映画好きの人達が集うここは、人生の学校のようだなぁ…と思う。

大人になってから友達を作ることは難しいと言われるけれど、大人になってからの出会いの方が私にとっては新鮮で、世界がどんどん広がっていく気がしている(ママ友、フィル友さん、趣味の仲間、仕事の同僚e.t.c.)。
淋しいことに、仲良くなっても時の流れと共に会えなくなってしまった方も多い。けれど、出会えた事は宝物だし、最近また新しく知り合った方とやり取りが始まったり、休んでいた方が戻ってこられたりして、こんなご時世だけど楽しく続けられていることに感謝だなぁ。。

父の死から一年、自分の生き方について自然と考えることが多くなった。
人生は限られている、だから自分の好きな事をしよう。。と、この一年は、コロナ禍でもほぼ月一でシネマ歌舞伎を楽しんできた。玉三郎さんや仁左衛門さんにハマり、シネマ歌舞伎では飽き足らず、今月は南座デビューを果たし、来月は初めて歌舞伎座に足を運ぶ予定だ。若い頃には全く興味がなかった'歌舞伎'という世界にこんなに惹かれるなんて、自分でも驚いている。
理屈抜きに、ただ"楽しむ"。それ以外に、何がある?そんな事に気づかせてくれた歌舞伎。素晴らしい役者さんのエネルギーを感じると、心が湧き立ち胸が震える。人生の可笑しみに心から笑う。義理人情にさめざめと涙する。人間の欲や愚かさに自分の胸に手を当てる。理不尽な輩に腹を立てる。絢爛豪華な衣装が目を喜ばせてくれる。心地よいお囃子に唄に拍子木の音に、耳を澄ませる。体中の感覚を全て使って、お芝居を楽しむ。
日々の憂さを晴らす、昔からの娯楽であるお芝居。歌舞伎という伝統芸能にすっかり魅せられている。

私にとって、今年"ドライブマイカー"に出会った事は、とても大きかった。自分の力だけではどうしようもない出来事に出会った時、どうすれば良いのか?伝え合うことの大切さと難しさについて、深く深く考えさせられたし、大袈裟でなく人生の謎が解けた気がした。
"メッセージ"以来の気づきだった!!
村上春樹の短編が、秀逸過ぎた。。

昨年の12月には、映画"SAYONARA AMERICA"の後に登壇された生・細野晴臣さんに会える♪という嬉しい事があった!
コロナ禍にあって、自分のするべき事を考え直した方も多いと思う。もうお歳は決してお若くはないのだけれど、何かを残したい!という想いに溢れた細野さんの決意に、心から感動した。。
やっぱり、音楽は素敵だ。

私も次のステップへ、、今の自分に何ができるのか?
確固たるものが欲しい!気持ちは焦りがちだけれど、すぐに答えが出せる訳ではないから、ゆっくり、じっくり温めていこう。

(クラシカルな)邦画を観よう!シリーズは、またやりたいな。

また、ここから先の新しい映画や人との出会いにワクワクしている🍀
あーさん

あーさん