ワンコ

君は永遠にそいつらより若いのワンコのレビュー・感想・評価

5.0
【焦燥感】

近頃、街行く人、特に、若者を見ていると、中性的なファッションが増えたなと思う。

フェミニンやマニッシュじゃないということだが、ノン・バイナリーと呼んだ方が良いかもしれない。

この作品の主人公の堀貝と猪乃木は、そんな感じのファッションだ。

確かに、猪乃木はロングヘアーだけれども、その理由は映画の中で明かされる。

堀貝は、ボーイッシュとまではいかないが、ショートヘアーだ。

男性の友人も、どちらかと言うと、男っぽさは少なくて、中性的なイメージで、唯一異なる安田は、実はかなりナイーブだったりする。

この作品は、こうしたジェンダー感を極力排して、思い悩む若者の気持ちにフォーカスをあてようとしたのだろうか。

(以下ネタバレ)

なぜ、ここで、この大学で勉強しているのだろうか。

やりたいことってなんだろうか。

多くの若者が突き当たる壁だ。

地元に帰って公務員になる。
皆んなは褒めてくれるけど、実は、疑問を感じていたり。

友人関係もありきたりな感じで、深い友情らしきものは少ない。貸し借りの打算的なところが多かったり。

身元引き受け人になるような関係だったのに、穂峰の変化に気付くことが出来なかったヨッシー。

どこかに孤独を抱えたまま惹かれ合い、身体を重ねる堀貝と猪乃木。

堀貝の寄り道と、Uターン就職で改めて孤独に苛まれる猪乃木が、その後、小豆島に帰ったのは、焦燥感が膨らんだからに違いない。

堀貝は、ハッとしたのだ。
穂峰の遺書を思い出したに違いないのだ。
焦燥感が勝ってしまったという穂峰の最後の言葉。

たぶん、この映画を観た皆んなは分かってるに違いない。
僕たちも、焦燥感が勝ってしまって、辛く苦しくなることは多いのだと。

コロナ禍で自らの命を断つ若者も、漠然としてるようで、とてつもなく大きな焦燥感と押し合いへし合いしていたに違いないのだ。

「…ごめんね、とっ散らかったことしか言えないんです、私は…」

堀貝…皆んな、おんなじだ。
皆んな、とっ散らかってるんだ。

きっと、堀貝は、とっ散らかった中で、言いたかったんだ。
猪乃木に、死ぬな…って、生きようよ…って。

猪乃木も、きっと、それを分かったんだ。

きっと、若者だけではない。
多くの人が共感できるような作品になっていると思う。

(※ちなみに、調べたら、”街行く”という日本語は、今のところありません。僕の小説の読みすぎか、音楽の聴き過ぎかもしれない。)
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