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セイント・フランシスのたにたにのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.0
【私はフランシス。あなたは?】2022年117本目

適齢期とは一体誰が生み出した概念なのだろうか。各個人のステップバイステップの歩幅は違うはずなのに、みんな社会的通念に影響され、人と違うことを恐れている。

34歳を迎えた、ある1人の女性の一夏の物語。生理、中絶などの女性ならではの身体的な特徴を隠すことなく表現する今作には、"そうであるべき"ことの違和感に声を上げるべきだと気づかせてくれる。

フランシスという女の子のナニーをすることになるブリジットは、友達の結婚報告SNSや親からの余計なアドバイス、彼氏とのセックスに違和感を抱いている。
望んでいなかった妊娠という現実にぶつかった彼女は、彼氏の意見に耳を傾けず、躊躇なく中絶することを選びます。

その理由は、子どもを育てる自信がないからではなく、"自分の子供ではない気がするから"です。

ブリジットをナニーとして雇ったレズビアンのカップルは、1人は新たな命をお腹に宿し、もう1人の黒人女性は仕事で忙しくしています。
出産をした女性は産後うつに頭を悩まし、黒人女性は家族との時間を取れないことなどの理由からパートナーの浮気を疑い始めます。

フランシスはそんな2人の一人娘としてマミーとママと当たり前のように暮らしています。ブリジットは、この家族と過ごしていくうちに、自分の"血の繋がった"子供を産むことは今ではないと考えたのではないかと思います。

年齢に関係なく、フランシスという女性を自分と同じ土俵に立たせ、女性であることの正直な痛みを共有している。これは、ラストシーンにフランシスがブリジットの元へ駆け寄り、社会的タブーとして捉えられている生理について堂々と共有したいと述べている点に表れている。

フランシスは、レズビアンカップルの娘であること、そして黒人であることなど、年齢を経ていくごとに気づき始める社会からの目に脅かされていきます。(もちろんそうでない世の中を願うが)

ブリジットの最後の涙は、そういう偏見に晒さられるフランシスを案じたものだと思われますが、生理という血を伴った痛みが訪れたときに、それを誰かに共有することができる人間になっていれば、そしてそうゆう社会になっていれば、きっとフランシスは前を向いて生きていけるはずです。

ブリジット自身は、それをフランシスから学んだのです。
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