ジャン黒糖

まともじゃないのは君も一緒のジャン黒糖のレビュー・感想・評価

4.3
この映画好き!
これは日本版『ラブ・アゲイン』と言っていいぐらい、映画好きがライトにおすすめしやすい作品としてこの先もリストアップされる映画になるんじゃないかな~!好き!!

【物語】
予備校講師の大野は数学への愛情とは裏腹に、人とのコミュニケーションが苦手でこのまま独身でいることに不安を感じ、結婚願望を抱くようになる。
教え子の秋本はそんな不器用な彼の姿を見て「普通じゃない」と語るも、彼女自身、学校に友達はいるけど陰口ばかりのコミュニティに居心地の悪さを感じていた。
そんなとき、将来への不安ばかり感じる大野は、秋本にどうしたら恋人ができるか相談をするようになる…。

【感想】
恋愛映画において恋愛偏差値の低い主人公のために偏差値の高い人物が指南する”恋愛レベルアップ”系映画(ってジャンルがあるかわかんないけど)といえば『ラブ・アゲイン』を思い出す。
あの映画では前半、ライアン・ゴズリング演じる超絶イケメンにして圧倒的打率を誇るプレイボーイが、離婚寸前の冴えない中年男性がもう一度妻に振り向いてもらうために”イケてる男性”のハウツーを教えるラブコメとなっている。

また、昨年Netflixオリジナルで配信された傑作『ハーフ・オブ・イット』では、様々なカルチャーに対する造詣が深いものの恋愛経験のないアジア系アメリカ人の文学女子と、好きな子を振り向かせたいけどどうアプローチしたらいいかわからずその文才を借りようとする不器用な体育会系男子の2人による”恋愛レベルアップ”していくサマと、その好きな意中の相手の想いがトライアングルに交錯していく姿が痛々しくも切なく描かれる青春映画だった。

本作『まともじゃないのは君も一緒』も、教わる側である大野先生だけでなく、教える側の秋本さんもまた、付き合った経験のない女子高生という、決して恋愛偏差値の高くない2人という構造自体、『ハーフ・オブ・イット』に似たバランスだけど、本作の場合、そこが実に日本人らしいおかしみを持って描かれ、観ていてついつい笑ってしまった。
『ラブ・アゲイン』同様、映画好きがライトにオススメしやすい恋愛映画として今後本作を挙げる人がたくさんいても納得な、とてもオススメしやすい一本。

生徒に告白された大野先生が「それ定量的に言ってもらってもいいかな?」という絶妙な間の取り方、彼のクセがスゴい笑い方、「じゃあ授業始めようか」「じゃあご飯食べに行こうか」と相手に提言するタイミングの悪さ、女性とお近付きになるために食器屋の店員さんに食い気味で話し掛ける異質感、思い出すだに最高!!

大野先生と秋元さんは会話の内容そのものは絶妙に噛み合っておらず、そんな相手の空気を読むことのできない大野先生の態度に苛立ちが増していくばかりの秋本さんだけど、2人の会話のテンポというか、ビート感は絶妙に合っている。
そんな”まともじゃない”2人が物語を通じて会話のビート感だけでなく徐々に心情も噛み合ってくる。ここが"恋愛レベルアップ"系バディムービーとして観ても最高!

秋本さんがPUFFY歌うシーン、良かったな〜いい女優さんだなぁ!!

また、一方の大野先生が乗り越えるべき恋愛ダンジョンのお相手となる泉里香さん演じる美奈子は、大野先生と並んで歩いている穏やかな時間、自然と笑顔になってしまう居酒屋のカウンターでのやりとりや本屋さんでの再会など、秋元さんといるときとはまた違った波長の合い方で、ここは自然と胸がキュンとなる。
泉里香さん、きれいだし華があるな~。彼女の最後の決断もまた、映画的には”まともじゃない”けど、現実はそうだよな、と切なくなる。

小泉孝太郎さん演じる宮本さんも、こういうスタートアップ起業家っているよな!って絶妙なキャラ設定といい、序盤から講演で話す立派さと比して喫煙所での信用ならなさといい、もっとシリアスに振ることもできる役なのにどこか絶えず憎めなさも持ち合わせていてそこが本作きっての”まともじゃない”キャラとなっていてとにかく最高!!

各キャラ、憎めなさたっぷりに、温かい笑いとともに描くが、終盤、大野先生が秋本さんに叱咤する場面はハッとさせられた。
「君が言っている普通は何かを諦めるための口実なのか?なんで自分で決めないんだよ!普通なんかどうでもいい、そんなものに縛られる必要なんか全くないんだよ!」

思わず熱のこもる彼の発言に秋本さん同様ハッとなるが、最後の最後に「それでも普通が良い?」と秋本さんに問われた大野先生が漏らす一言、最高でしょう。
もう”最高”としか形容できないけど、この映画は本当この先も時々観たくなる、普遍的な映画としてお気に入りなりました。最高。
ジャン黒糖

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