モクゾー

ドント・ルック・アップのモクゾーのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
3.8
●人それぞれ、本質からの目の逸らし方…


BIG SHORTを10回くらい観たわたしはアダム・マッケイ作品ならば観なくてはいけない…ので鑑賞。
(※マネーショートという邦題は嫌いだ…)


天文学者が地球にぶつかる彗星を発見。手を打つよう政府に詰めかけるが、どの人もまじめに耳を傾けず、地球はどうなってしまうのか…という、ディザスターテーマの社会派ドラマ。
シリアスな話ではあるが、そこかしこにコメディ要素が散りばめられているので、エンタメとして良作である。

BIGSHORTの時と同じように、人の手にはおえない状況…例えば資本主義というシステムだったり、宇宙から飛来する彗星だったり…を目の前にした時、人々はアタフタ戸惑うばかりで、まともなことを言う人ほど変人のように見えてしまう。その様はある種のコメディになってしまう、という監督得意のストーリー構成。

そして今回のタイトルでもあるdon't look up…作中でも出てくるが、楽観主義者たちの標語「彗星なんかなんとかなる」という意味あいであるが、まさにこのドラマが描き出そうとするテーマ「本質から目を逸らす」ことをうまく言いまとめている。
※look up自体は「調べる」とかの意味でしたっけ?だとすると科学をバカにする姿勢ともとれるダブルミーニングなのか。

作中に出てくる人間は誰も彼も、本質から目を逸らしている。人類の滅亡がかかった時でも、人の目を気にしてしまったり、小さなトラブルに頭を悩ませたり…それこそ人間的とも言えるし、人間なんてただの動物である、ということも同時に思い知らされる。
それを示すかのように、人間たちのカットに時折入る自然や動物の営みの映像…よっぽど人間よりも落ち着いて生活をしているように見える。

科学、テクノロジー、ビジネス、経済、政治、権力…長い時間をかけて作り上げてきた文明は、足元に盤石に存在していると思い込んでいるが、全て人間たちが作ってきたもの…つまりは完璧ではないのだということを軽妙なタッチの裏に抉り出す。その手腕や見事。

ウィルファレルと組んでいたころははちゃめちゃコメディ専門の監督であったが、いまや素晴らしい社会派監督アダムマッケイ。

超豪華なオールスターキャストで、キレがある編集、CGも綺麗。
楽しく観れる映画なので、おすすめです。