モクゾー

哭声 コクソンのモクゾーのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
3.4
●現実が物語を作るのか、物語が現実を作るのか…


人からお勧めされて鑑賞。
やはり韓国の映画はアジアでもレベルが高い…不思議な空気の良作ホラーであった。

正直に言うと、きちんとストーリーを理解できていないところも多いのだが、人が「何かを信じ込む」という行為によって現実に霊的なもの(怪物)が生み出されてしまう…という心理的な状況を描いている…ということではなかろうか。

ホラーは苦手なのだが、この映画は純粋な怖がらせ…というよりも、なんとも言えない悍ましさが感じられる。妙に明るくてサイコな感じが、韓国の片田舎の村社会と相まって、いい感じのじっとりとしたヤダミを醸し出す。


多くの怪談は、禁忌を認知させる装置として発生した。
例えば「夜ドコソコに行くとお化けが出るぞ」という怪談は、実際に暗いと危ないところに人を近づかせないという装置として開発され、機能する。
しかし、元来、何が禁忌なのかが忘れさられて、物語の上澄みだけが残った時、物語の方が現実に染み出してきてしまう…ということがこの映画のテーマではないかと感じた。

つまりは、なんだかわからないが恐ろしい怪談だけが存在する村で、そこに住む人々の猜疑心と信心によって、村に来た異国人が本当の化物になっていく…というような具合だ。

流行り漫画の呪術…とかチェンソー…などでも信心(ある種の呪い)が、心霊存在の力を強めるという設定があるが、そう言ったものと近い設定とでも言えるだろうか。。

うまく言い表せていない気がするが、京極夏彦を読む人ならば理解してくれるだろう…笑


ゴアな描写は結構あるものの、本線のストーリーは、比較的ポップなコメディ調に進んでいく。この辺り、ホラー映画だから不吉で薄暗い雰囲気だぞーという最近の安っぽい邦画とはレベルが違う。

役者もそれぞれとても良く、不気味な異国人として怪演する國村隼も素晴らしいが、なんといっても子役の女の子。この映画の質を決めると言っても過言ではない、素晴らしい狂気を見せてくれる。

尺も長いので、軽く見る映画…というにはお勧めしないが、時間があって、じっとりとした不思議な世界に浸りたいという人にはお勧めの映画である。