モクゾー

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのモクゾーのレビュー・感想・評価

4.2
●リアル世界のマルチバースを駆け抜ける傑作ヒーロー映画


MCUのフェーズ3を締め括ったのがエンドゲームではなくスパイダーマンファーフロムホームであったように、スパイダーマンはいつもこのユニバースの大きな転換期に大事な役割を果たしている。
そういった映画を、きちんと単体としても楽しめるエンターテイメントにできているという制作レベルの高さには舌を巻くばかりだ。

キッズ、ジュブナイルものの名手であるジョンワッツ監督が描く、ちょうど子供から大人に変わる大学進学の時期…
イノセンスな子供生活から自分の選択に「大きな責任」が生まれるようになるというタイミングで、軽はずみな選択が世界を巻き込む大きな騒動に発展していく。。

ネタバレせずに語るのはあまりにも難しいのだが、この映画は今まで繰り返されてきたスパイダーマンという作品のあり方自体を、構造的に救済する。
版権やらなんやら、大人の都合で何度も繰り返されたスパイダーマン映画、その度に死んできたベンおじさん…

繰り返し、繰り返し、いままで我々が見るたびにリセットされてきたもの…それら全てがこの世界には蓄積されていて、いまも生きているのだというメッセージ。
我々が、「またリブートか」とため息をついてきたこの経験全てが、カタルシスとして回収されるこの感覚。最高である。

アイアンマンに始まった、各単体のヒーロー大作映画が一点に集約していったMCU。
そこに、スパイディはそのウェブでMCUの外のユニバースの映画まで絡めとってくれる…

親愛なる隣人は、我々のような映画観客にとっても隣人(ヒーロー)なのである。

もし、過去のスパイダーマンを観ないでこれを観たらどう思うのか…ということに思いを馳せるのは難しいが、せっかく見るならば、過去スパイダーマンと名のつく映画を全部見てから望むのがおすすめである。