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Swallow/スワロウのRenのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
4.0
アイデア勝負のスリラーかと思いきや。異食症をベースに、女性の生きづらさ、葛藤を浮き彫りにするヒューマンドラマに仕上げる手腕に痺れた。

ポスターから滲み出る色彩センス。赤と青、相反する2色のモチーフが全編に滾り、写真集のように整頓されて美しい。

圧迫感・孤立感に苛まれる女性像を描くのに、資産家と結婚した妻を持ち出すのには若干飽きているところだけど、それを踏まえて設定の妙が上回った作品であることは間違いない。主人公・ハンターが異食症となるきっかけを描いた場面で心掴まれた。
高級レストランでおもむろに氷を齧る彼女を、引きの定点カメラで捉える。間違いなく社会の一員ではあるのに、孤立している彼女の描き方が本当に上手かった(ハンターの視点と夫の視点では、家が全く違う立地に建っているように見える) 。

この物語は、圧迫が異食症となって現れた女性という特異なケースだけを描いた作品ではない。ハンターとその他の女性は実は根本のところで繋がっている。そんなメッセージを、ある場所での人々のルーティンを長回しで延々と流すことで伝えてくる。このエンドロールのセンスには脱帽。導入が異食症スリラーなのに、こんなエンディング観られるとは思わないじゃん...。

ビー玉を飲み込んだり画鋲を飲み込んだり、結構痛々しくて目を背けたくなる場面もちらほら。この映画を観ながらポップコーンを食べるときには注意。
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