奥行き、パースを意識した構図どりが『封印された部屋』以上にみられる。人の動く方向とカットつなぎはきれいに整合性がとれてて視点誘導がとてもスムーズ。また「一方そのころ」の並行クロスカッティングが部屋の中と出先の2ヶ所から3ヶ所にわたり、さらに電柱に上って電話線を切る男のショットが短くインサートされ4ヶ所になる。その短いインサートや馬車の疾走(これも奥行き)により否が応にもサスペンスが盛り上がる。
出先の店から妻に電話をかける夫の構図はその電話を受ける妻の構図とやや同ポジみたいに見えるんだけど、ちゃんと遠くからかけてる感はある。これがたとえば妻が左手で電話をとるショットと夫が右手で電話をとるショットだったら、おそらく壁一枚隔てたくらいの近くで電話し合ってるように見えるのかもしれないと思った。そういった視覚的お約束を逆手にとり、離れた場所から電話で話してることになってるのに目の前にいるという演出が鈴木清順『ツィゴイネルワイゼン』で見られる。
部屋にいる次女は白いスカートとソックスで背中を向けてテーブルにもたれ片足を曲げたポーズで結構長い時間同じ姿勢をとらされてて、物語の必然性よりもフォルムの面白さとしてそこに配置されていると想像できる。ちょっとバルテュスの少女のよう。もしかしたらロリータ的な興味関心を狙ったのかもしれない。