ケーティー

リンダ リンダ リンダのケーティーのレビュー・感想・評価

リンダ リンダ リンダ(2005年製作の映画)
-
今一時の青春の輝きを閉じ込めた映画。ナンセンスな頑張りから生まれる、その輝き。


文化祭の直前で揉めてボーカルが抜けた軽音部の女子高生バンドが、日本語も怪しい基本一人で行動している韓国人留学生をボーカルに迎え、文化祭でのライブ披露を目指す話。

今一時の青春の輝きを閉じ込めた映画。
淡々と、ある種の悠揚さすら感じさせる描写で高校生の部活の日常を描くその作り方には、青春映画の傑作「がんばっていきまっしょい」に通じるものがある。

ただし、「がんばっていきまっしょい」はボート部の試合の勝利という明確な意味ある目標があるのに対し、本作はただ文化祭で発表するという、大人の視点からは意味ある目標のある頑張りではない。言わば、ナンセンスな頑張りが本作の主眼なのだ。別に軽音楽部のライブはコンテスト形式にもなってないし、ライブを盛り上げて何かを成し遂げたい(例えば、誰かを見返すとか)でもない。ただ演奏する、そのためだけに頑張る女子高生たちを描写するのである。
しかし、この視点こそが青春特有の輝きをより端的に表出させている。例えば、運動部の頑張りだって、試合に勝つという一見もっともらしい目標があるが、一部の例外を除いて大半の人は、何もそのスポーツのプロ選手を目指すとか、アメリカのように名門大学に入学するときのネタにする(※アメリカは日本のAO入試のように名門大学の入試で課外活動が評価される)わけでもない。ただ頑張るために何かをやる。そのある種のナンセンスさこそ、青春の輝きなのではないだろうか。だからこそ、この映画はそんな青春のもっとも青春らしいかがやきを端的に表現しているから、魅力的なのだろう。

また、それぞれの人物の描き分けもいい。
冒頭で茫然自失だった恵が、ラストでは響子に笑顔を向ける優しさ。
一生懸命でみんなに好かれるよう愛想を振りまくタイプだが、実は不器用な響子。
真面目そうに見えて恋愛の話題になるとテンションが上がったり、(これは話の結末の伏線にもなっているが)カラオケで歌を熱唱したりするソン。
普段はあまりしゃべらないけど、音楽には人一倍詳しかったり、テキパキと料理をしたり、仲間で話してて突然こういうことが大事なんだと思う的なクサいことを言う望。
4人それぞれ魅力と個性があるからこそ、淡々とした日常の描写も弾むし、作り手としても話のアイデアがどんどん出てきたのではないか。

所々入る小ネタも面白く、留年している先輩の描写やカラオケ店でソンが店員と争うところなど、伝えたいことを伝えつつ面白いのがいい。
あと、ソンにマツケンさん演じる高校生が告白するところで、日本語の話せる留学生に無理して韓国語でひたすら告白しようとする無意味さとか、なんか高校生の男っぽくて面白いんだけど、でも、その年代の男特有の不器用さもあって、どこか切なくもあり、いいのである。

また、構成的な見せ方としては、文化祭のPRビデオ(記録ビデオ?)の撮影の体で、青臭いことを言っておもいっきり作品のテーマを訴えるつくりも好き。またここでのビデオの作り方の粗削りさが、また青春らしさを感じる。

人物の作り方や小ネタ、細かなディテールなど、全体として、日常描写のディテールにこだわったつくりに徹底しているのがやはりよい。それはラストにも表れていて、ラストも大きな奇跡ではなく、雨で偶然体育館に人が集まるというリアルな線からの輝きになっているのがうまい。