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カーズ2のRenのレビュー・感想・評価

カーズ2(2011年製作の映画)
3.5
世間的に駄作扱いなのは納得ではあるが少し悲しい。ピクサーダントツの珍作なのは間違いないけど、自分は前作で見せたヒューマニズムなんて置き去りにした弩級のトンデモアクションに魅了されて何度も円盤で観返した側の人間なので。「続編」ではなく「スピンオフ」として観るのが吉。

何度も言う、前作のことは忘れてほしい。
『ミッション:インポッシブル』「007」を想起させるゴリゴリのスパイ映画。潜入からのド派手なカーアクションへ繋げるオープニングが文句無しにかっこいい。『カーズ』ってなんだっけと小首を傾げながら引き込まれていってほしい。

世界中を舞台に行われるレースの裏で動く陰謀、その正体に迫っていく。故に全部で三度出てくるレースシーンにまともなレースは無い。車の話なのに「走る」快楽を削ぎ落として、「飛ぶ」「爆発する」「推理する」快楽のパロメーターを振り上げたヘンすぎる映画。
登場キャラクターが車、もといモノであることの利点はグロさが低減されることか。冒頭から車が大破しまくる。スクラップにされる。中盤、あるスパイが敵の拷問に合いエンジンが爆発して死亡するシーンは子どもにはなかなか刺激的かもしれない。

そんな今作の主題はとってもシンプル。ありのままの自分でいい。友達って大事。それだけ。

ひとえに問題なのは、アクション・スパイ映画的な面白さと引き換えに前作のキャラクターの魅力を殺していること。
今作の実質の主役であるメーターも、憎めないヤツからただのトラブルメーカーに成り下がってしまっている。マックウィーンはマックウィーンで前作でしっかり成長してしまったので、本来なら彼の物語としての続編は『カーズ/クロスロード』のような形しかあり得ない。今作を飛ばして『カーズ』から『カーズ/クロスロード』でも十分このシリーズのやりたいことは分かる。今作は余裕があったら観ましょう。

あと日本の描き方も甚だ疑問。いつまで五重塔と富士山を重ねて配置してトーキョーネオン街と相撲を押し出しているのだろう。本筋に一切関係の無いトイレのギャグも若干辟易とする。「スタッフが日本に来た時にトイレのボタンの数に驚いたので、ぜひ作品にも入れようと思った」というのが製作陣の弁だけど、コンセプトも何も無い、あれもこれも詰め込んだ寄せ鍋感はあんまりピクサーには期待してないのよ〜と思う。

スパイ映画!カーアクション!銃撃戦!黒幕は誰だ!これらのワードが琴線に触れたら観ても良いと思う。この頃からピクサーは暗黒期のようなタームに突入してしまう、というのが一般的なイメージか。

Blu-rayでは、候補に上がっていたオープニングの別バージョンを(絵コンテベースだけど)観ることができる。こっちのもなかなか面白そうではあるけど、本編に採用された油田のアクションには敵わないかな。タイヤのホイール部から小型爆弾を発射して施設を吹き飛ばし爆破させるあのアクションには。
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