鷲尾翼

TITANE/チタンの鷲尾翼のレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.0
【まとめシネマ】#644

【まとめ】
* 新たな概念から生まれる欲求
* 痛みと叫びで伝える生命
* 強烈に神秘的なドキュメンタリー

本作は第74回カンヌ国際映画祭で、最高賞(パルム・ドール)を受賞した異色の話題作。ちなみに過去の受賞歴は「パラサイト 半地下の家族」「万引き家族」「アデル、ブルーは熱い色」など。

アガト・ルセル演じる本作のヒロイン、アレクシアは、幼少期に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれた。それ以来、車に対して異常な執着心を抱き始める。大人になった彼女は、モーターショーのショーガールとして踊る一方、シリアルキラーとして次々と人を殺めていた。

本作で重要なのが、作品の中で定義している新たな概念。

それが「車とSEX」ということだ。

車に男性器が付いているわけでもない。車のパーツを男性器に見立てて性行為を行う訳でもない。作中でも詳しく定義していないこの概念を理解しないと、本作も理解できない。

車とSEXをしたアレクシアは、妊娠してしまう。

前半はセクシーでバイオレンスな彼女が楽しめるのだが、後半になると、成長する未知の生命に戸惑いながら、痛みと戦いながら、叫ぶ。この叫びは、男性には分からない陣痛や出産の痛みを、ダイレクトに伝える。

なぜ本作がパルム・ドールを受賞したのか。その答えは「立派なドキュメンタリー」だからだと思う。

その強烈な世界観と、エログロ、神秘的な生命の誕生を目撃した瞬間、この作品が愚行ではなく、傑作だと確信する。
鷲尾翼

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