鷲尾翼

EO イーオーの鷲尾翼のレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
4.0
【まとめシネマ】#1098

【まとめ】
* 最優秀俳優賞・ロバ
* 最悪な人間と旅の運命
* 現代に通づる異色の童話

本作の最優秀俳優賞は、間違いなくロバだ。

あるサーカス小屋にいたロバのEOは、動物愛護団体のデモ活動がきっかけでサーカス小屋を離れ、数々の場所を転々とする旅が始まる。「人間の愚かさ」をテーマに描いている物語の中で、唯一の癒しと優しさを持つEOの姿は稀有な存在だ。また、ロバ特有の儚い表情が、良い塩梅で物語の旨味になっている。儚く冷たい目線だからこそ、目に映る人間が愚かに見える。

素敵なEOとは対立的に、本作に登場する人間は最悪だ。冒頭の愛護団体の過激なデモ活動はもちろん、人間の身勝手なエゴや理不尽な偏見と言動の数々に、EOは心身が傷つく日々を送る。優しい世界を求めて、逃げるように場所を転々とするEOが辿り着く結末は、強烈な風刺を感じる。

本作は、ロバを主役にした童話のような作品だが、メルヘンな作風とは別に、現代に通づるものも感じる。本作で描かれるEOの姿は、生きづらさを抱える若者のように思える。理不尽な社会を経験して、社会に適合出来なくて、儚い優しさに縋ってしまう。僕は、EOの姿に共感してしまう若者のひとりだ。
鷲尾翼

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