このレビューはネタバレを含みます
車へのフェティシズムから車とセックスし車の子供を妊娠した、指名手配中のシリアルキラー女性と、疑念を持ちつつも彼女を失踪から戻った息子と信じ、受け入れる男性。相互関連のない複数テーマを入念に噛み合せたストーリーと、プロダクションクォリティの高さとが、奇抜なアイディアゆえ陥りやすい B級感を出すことなく、濃密なドラマを創出。フェティシズム対象のモノとのセックス願望は、男女問わずある人にはあるだろうが、一歩進んで妊娠を発想する感覚は、女性特有ではないか。また、妊娠に伴う痛み、身元詐称で秘匿を強いられる状況下で増幅されたそれが、主要テーマの 1つだが、殺人や自傷の過激な描写は、その痛みを男性観客にも感じさせる手段に思えた。一方で、後半からの息子を失った父親が、別ベクトルのドラマをもたらす。息子を巡る謎が多いが、死んでいること、それを両親が知っていること、が暗示されていそうだ。近現代風室内楽と合唱とシンセの劇伴、普通だが高クォリティと主張しなさ加減が教科書的
